第166回芥川・直木賞決定 直木賞は今村翔吾さん、米澤穂信さんのダブル受賞

文学賞・賞

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 第166回芥川龍之介賞、直木三十五賞の選考会が1月19日、築地・新喜楽にて行われ、芥川賞に砂川文次さん(31)の「ブラックボックス」(群像8月号)が、直木賞には今村翔吾さん(37)の『塞王の楯』(集英社)と米澤穂信さん(43)の『黒牢城』(KADOKAWA)がそれぞれ選ばれた。

芥川賞 砂川さんは自衛官出身

 芥川賞を受賞した「ブラックボックス」は、自衛隊を辞めメッセンジャー(自転車便の配達員)として働く男性が主人公。主人公の不安定な働き方から生まれる焦燥感、苛立ちを通して現代日本社会を情景的に描いた物語だ。
 著者の砂川さんは、1990年大阪府生まれ。元自衛官の経歴を持ち、陸上自衛隊操縦学生時代に書いた「市街戦」が評価され、2016年に文學界新人賞を受けてデビュー。『戦場のレビヤタン』が2018年下半期、『小隊』が2020年下半期の芥川賞候補となり、今回三度目の候補となった。

ダンスの先生から直木賞作家へ 今村翔吾さん『塞王の楯』

 直木賞を受賞した『塞王の楯』は、安土桃山時代末期を舞台に、城の石垣などを作る「穴太衆(あのうしゆう)」の石工(いしく)を主人公に据えた戦国小説。
 著者の今村さんは1984年、京都府生まれ。ダンスのインストラクターや滋賀県守山市埋蔵文化財センターの調査員などを経て、2017年に『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。直木賞は『童の神』、『じんかん』に続き、三度目の候補での受賞となった。
 今村さんは今回の受賞作について、読書情報誌「青春と読書」のインタビューで「『塞王の楯』に着手した時から、これはうまいこといけば類例がない小説になるだろうとは思っていました。目標としては穴太衆の石垣のように二百年後、三百年後も読まれているものになっていたら嬉しいです。」と語っていた。

もう一つの直木賞は、昨年ミステリーランキング4冠を達成した米澤穂信さん『黒牢城』

 もう一つの直木賞受賞作である『黒牢城』は、戦国時代を舞台に、幽閉された黒田官兵衛が探偵として謎を解いていくミステリーと歴史小説が融合した作品だ。
 著者の米澤さんは1978年、岐阜県生まれ。2001年に『氷菓』でデビューし、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞を受賞している。今回の受賞作『黒牢城』は、昨年の「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」のミステリーランキングを総なめし、史上初の4冠を達成した。
 文芸WEBマガジン「カドブン」が、『黒牢城』刊行時に行った恩田陸さんとの対談では「今回のような歴史もの、過去の特定の時代を舞台にしたミステリーはまた書くだろうなと思っています。もっとも、時代を書きたいというのではなくて、小説を書きたいんですけどね。その小説にとってその時代が必要ならば、きっとまた書くと思います。」と、今後の展望について語っている。

 芥川賞・直木賞はどちらも昭和10年に制定。芥川賞は新聞・雑誌に発表された純文学短編作品が対象。主に新人作家に与えられる。直木賞は新聞・雑誌、単行本で発表された短篇および長編の大衆文学作品を対象に優秀作を選定。主に新進・中堅作家が対象。

 第166回の候補作は以下のとおり。

■第166回芥川龍之介賞(文芸誌) ※作者五十音順・敬称略
石田夏穂「我が友、スミス」(すばる11月号)
九段理江「Schoolgirl」(文学界12月号)
島口大樹「オン・ザ・プラネット」(群像12月号)
砂川文次「ブラックボックス」(群像8月号)
乗代雄介「皆のあらばしり」(新潮10月号)

■第166回直木三十五賞(出版社) ※作者五十音順・敬称略
逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)
彩瀬まる『新しい星』(文藝春秋)
今村翔吾『塞王の楯』(集英社)
柚月裕子『ミカエルの鼓動』(文藝春秋)
米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA)

Book Bang編集部
2022年1月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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