江戸時代の離婚事情 嫁姑・親権・金銭問題はやっぱりあった 直木賞作家・西條奈加の『わかれ縁 狸穴屋お始末日記』が文庫化でベストセラー

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 3月14日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文庫第1位は『灰色の階段 ラストライン?』が獲得した。
 第2位は『お探し物は図書室まで』。第3位は『本所おけら長屋(二十)』となった。

 4位以下で注目は4位に初登場の『わかれ縁 狸穴屋お始末日記』。2021年に『心淋し川』(集英社)で第164回直木賞を受賞した西條奈加さんによる離婚を題材にした時代小説。訴訟のために地方から江戸に出てきた人を宿泊させ訴訟手続を手伝う「公事宿」。なかでも離縁の調停に強い「狸穴屋」を舞台に、様々な夫婦・家庭の事情で離縁を願う人々が描かれる連作集。当時の法律や慣習に関する知識を織り交ぜながら話は展開。主人公は働かず浮気を繰り返す夫に悩み、自身も離縁を望む絵乃が務める。

 文芸評論家の末國善己さんは《絵乃が挑むのは、両親を離婚させたいと考えている商家の怪しい兄妹、複雑に入り組む武家の嫁姑問題、母の実家も父の実家も必要とする才能を持つがゆえに起こる息子の親権争いなど、現代にも通じる難しい案件ばかり。いつの時代も変わらない夫婦や家族の問題が暴かれていくところは身につまされるが、身近なテーマだけに解決シーンには爽快感がある。》と紹介。《江戸の離婚事情を通して、男は外で働き女は家で家事をする、結婚した女性は婚家に従属するといった考え方が、決して日本の伝統ではないと明らかにしたのも興味深かった。》と評している。

1位『灰色の階段 ラストラインΦ』堂場瞬一[著](文藝春秋)

異動の先々で事件を呼ぶ男・岩倉剛。彼の刑事人生の全貌が、いま明らかになる!〈異動の先々で事件を呼ぶ男〉と言われるベテラン刑事・岩倉剛。彼は事件に関する異常なまでの記憶力を持ち、誤った方向に暴走しそうになる捜査本部をギリギリで引き留める「ラストライン」の担い手でもあった。岩倉の刑事生活ラストの10年を描く「ラストライン」シリーズだが、本作はそのシリーズ外伝として、それ以前の岩倉の活躍を描く短篇集である。岩倉の警察官として初の事件から、結婚式前夜の事件、追跡捜査係の立ち上げに参加、東日本大震災に見舞われた火災犯捜査係時代、そして恋人・実里との出会い……。岩倉の刑事生活の全貌がわかるファン待望の一冊。(文藝春秋ウェブサイトより)

2位『お探し物は図書室まで』青山美智子[著](ポプラ社)

お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?不愛想だけど聞き上手な司書さんが本と付録であなたを後押しします。(ポプラ社ウェブサイトより)

3位『本所おけら長屋(二十)』畠山健二[著](PHP研究所)

江戸は本所亀沢町にある「おけら長屋」には、落語の登場人物のような個性的な住人たちが揃い、今日もお祭り騒ぎだ。ある日、おけら長屋の万造と恋仲である聖庵堂の医師・お満に、長崎留学の話が持ち上がるが、最低三年は長崎で学ぶ必要があると聞き、お満は思い悩む。一方、両親に捨てられたと思っていた万造に母親の手がかりが見つかり、長屋の住人たちは奔走する……。大人気シリーズ、ついに完結か!?(PHP研究所ウェブサイトより)

4位『わかれ縁 狸穴屋お始末日記』西條奈加[著](文藝春秋)

5位『流人道中記(上)』浅田次郎[著](中央公論新社)

6位『カケラ』湊かなえ[著](集英社)

7位『流人道中記(下)』浅田次郎[著](中央公論新社)

8位『薬屋のひとりごと 13』日向夏[著](主婦の友インフォス)

9位『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編9』衣笠彰梧[著](KADOKAWA)

10位『一人称単数』村上春樹[著](文藝春秋)

〈文庫ランキング 3月14日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2023年3月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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