大江健三郎氏
■当時最年少の23歳で「芥川賞」を受賞
3月13日、日本を代表する作家の一人、大江健三郎氏が今月3日に老衰で逝去していたことが分かった。秘蔵写真とともにその功績を振り返る。
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大江健三郎氏は1935年生まれで、愛媛県の出身。東京大学在学中の58年に『飼育』で当時、最年少で「芥川賞」受賞者となった。
64年には、知的障害を持って生まれた長男・光(ひかり)氏の存在を契機に書かれた『個人的な体験』で新潮社文学賞を受賞した。
当時、『週刊新潮』にはこう寄稿し、筋トレ姿を披露したエピソードが残っている。
〈ノーマン・メイラーによれば、小説家とは常に、どこか労働者階級のにおいがするものだ。僕はメイラーの意見にくみして、筋肉の鍛錬をはじめたのであった。〉
ノーマン・メイラーとはアメリカの小説家で、従軍した第2次世界大戦の体験を元に書かれた『裸者と死者』などの代表作がある。
■日本人2人目の「ノーベル文学賞」受賞
大江健三郎氏
その後も『万延元年のフットボール』や、『「燃えあがる緑の木」三部作』などの名著を生んだ。
94年には日本人で川端康成以来、2人目となる「ノーベル文学賞」の受賞者となった。
「詩的な想像力によって、現実と神話が密接に凝縮された想像の世界を作り出し、読者の心に揺さぶりをかけるように現代人の苦境を浮き彫りにしている」
という評価を受けてのものだった。
受賞の知らせを受け、自宅前で記者に応じた大江氏は、
「驚きました。候補になったと聞いていても冗談だと思っていましたから」
と喜びを滲ませながら、駐日スウェーデン大使からお祝いを受けた。
大江健三郎氏
■映画監督の伊丹十三氏は義兄
翌年、光氏との生活をモデルにした小説『静かな生活』が映画化された際には、大江夫人・ゆかり氏の実兄で、義兄にあたる伊丹十三氏が監督を務めた。
光氏とともに撮影現場を見学した際には、
「自分の作品はこれまで3回映画化されているが、(略)腹が立ってしまって、どれも観ていない。でも、今回は伊丹さんが私の表現したいことを映画の形でよく語ってくれていると思う」
と、満足気だったそうだ。
それ以降も精力的に執筆活動を行いながら、自身の政治的理念を追求し、文学史に名を刻み続けた。
叡智ある作家が亡くなった悲しみは、彼の残した著作に触れることによって癒やすしかない。
ノーベル文学賞を受賞し駐日スウェーデン大使からお祝いされる大江健三郎氏
大江健三郎氏と長男の大江光氏(右)
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