歯周病の予防のためのセルフチェックと歯磨き 福田デンタルクリニックの院長が推奨するやり方とは?

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「日本人の成人の約8割」が罹っているといわれる歯周病。

 2018年に日本歯科医師会の医師2345名に行われた「永久歯の抜歯原因調査」では、歯が失われる原因のトップは歯周病で37・1%です。2位の虫歯29・2%を大きく引き離している事実から考えると、歯周病はお口の健康で最も気をつけたい問題であると言えるでしょう。

 歯周病に対してどのようなケアが必要なのか。歯科医師の福田真一さんが刊行した『認知症になりたくなければ歯周病を治しさない』の中から、歯周病のセフルチェックと正しい歯の磨き方を一部抜粋・編集してお届けします。

●あなたは歯周病? セルフチェックしよう

 歯周病患者の多くは初期症状に気づきません。歯周病菌の出す毒素が脳からの指令を阻害するため、痛みが感じにくいとされているのです。静かに、だけども着実に進行していくことから、歯周病は別名「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれる本当に怖い病です。

 「自覚症状はないけど、もしかしたら歯周病かもしれない」と思った方、早速チェックしましょう。図1は歯周病のチェックリストです。


[図1]歯周病のチェックリスト

 ご自身のお口の状態を確認しながら、当てはまる項目をチェックしてください。13項目のうちひとつでもご自身の状態に当てはまるものがあれば、歯周病の可能性があります。当てはまる項目が多いほど歯周病が進行している可能性が高いです。また、次の条件に当てはまる方は歯周病になりやすいといわれていますので要注意です。

 ・中年以降の世代

 ・喫煙者・糖尿病にかかっている

 ・歯磨きの仕方が悪い

 ただ、歯周病にかかっているかどうかを判断するには、歯科クリニックの診察を受けるのが一番です。ひとつでも項目が当てはまった方は、歯科クリニックの診療を受けてみるといいでしょう。

 ちなみに、わかりやすい歯周病のサインに口臭が挙げられます。歯周病による口臭は大変強く、1メートル離れた相手にも届くこともあります。歯周病は一般的に「玉ねぎや卵が腐ったような臭い」と言われるほどの臭いを発生させます。

 症状が進行すると、歯周ポケットのなかで絶えず炎症が起きるようになるため、口臭はもっと強くなります。

 なお、食後に口臭が気になることがあっても、あくまで一時的なものであれば問題ありません。もし口臭が気になる場合には、歯科クリニックで適切な処置を受けましょう。

●歯ブラシの前に歯間ブラシとデンタルフロスを使う

 皆さんは歯磨きをするとき、どのような手順で行っているでしょうか?

 クリニックにいらした患者さんにお聞きすると、歯磨きを終えた後にデンタルフロスや歯間ブラシを使うという方が多くいらっしゃいます。

 デンタルフロスに歯間ブラシなどをお使いになるのはとてもよいことなのですが、私が推奨する歯磨きの順番は真逆です。まず、歯間ブラシとデンタルフロスを使って歯の汚れをある程度取り除いてから、最後に歯ブラシを使って磨き上げるのです。理由は、歯周病のリスクが高い部分の汚れを取り除いた後に歯ブラシをしたほうがよりきれいになるためです。

 歯ブラシは歯の表面を磨くには適していますが、歯と歯の間の汚れまではうまく取れません。歯と歯の間に汚れが残ってしまうと、細菌が繁殖しやすくなってしまいます。

 ですが、磨いた後に歯と歯の間の汚れを歯間ブラシやデンタルフロスでケアしても、今度はまた口内に汚れが残ることになります。これではせっかく磨いたのに残念な状態になってしまいます。そのため、先に汚れを取って、磨いてあげるというわけです。

 歯間までしっかりケアをしている人は、それだけ長生きできるという研究結果もあります。ぜひ、歯間ブラシやデンタルフロスを使い、歯ブラシと合わせて歯間のお手入れも行っていきましょう。

 ただ、毎回歯間ブラシとデンタルフロスを使うのは面倒に感じますよね。ですから、歯間ブラシとデンタルフロスは1日1回程度を目安にするといいでしょう。

 1日1回の頻度には、ちゃんとした根拠があります。歯の表面についた食べカスが表面につくと、それが4~8時間ほどでプラークに変わります。20時間ほど経つとバイオフィルムが形成されて細菌の毒性が強くなります。

 1日1回しっかりとケアをすれば、バイオフィルムが形成される前に汚れを取ることができるというわけです。

 ちなみに私の場合は、朝はデンタルフロスと歯ブラシ、お昼は歯ブラシのみ、夜は歯間ブラシと歯ブラシを使うようにしています。このように歯間ブラシとデンタルフロスを一緒のタイミングで行わなくても問題はありませんので、ご自身のライフスタイルに合わせて取り入れてみてください。

 なお、歯磨き粉を使う必要はありません。歯磨き粉を使うと唾液を何度も吐かないといけなくなり、歯磨きに集中しづらくなるからです。もしどうしても歯磨き粉を使いたい場合は、虫歯予防に効果があるフッ素入りの商品を選ぶといいでしょう。

●歯間ブラシは歯茎を傷つけないようにやさしく動かす

 歯磨きの順番を理解したら、実際に歯磨きをしてみましょう。

 まずは歯間ブラシを使います。


[図2]歯間ブラシの使い方

 図2のように歯と歯の間に歯間ブラシを差し込んだら、そのまま10 回程度前後に動かします。少し左右に角度をつけて動かしながら、隅々までブラシが当たるようにしましょう。 注意点は力任せに動かさないようにすることです。強い力で歯茎を傷つけてしまうと、腫れたり、出血したりする場合があります。軽い力でやさしく動かすことが大切です。

 初めて歯間ブラシを使った方に使用後のブラシを嗅いでいただくと、「すごく臭い」と言って驚かれます。私たちの歯と歯の隙間は何もしないとそれだけ汚れているということです。臭いは繰り返し掃除しているうちに、だんだんしなくなります。

 なお、歯間ブラシは、歯茎のマッサージ効果も期待できます。ブラシの刺激によって、歯茎が引き締まって歯周病予防にもつながります。

●デンタルフロスはゆっくり動かし歯垢や食べカスを取る

 歯間ブラシの次はデンタルフロスです。

 ここではロールタイプを使って説明します。


[図3]デンタルフロスの使い方

 図3のようにゆっくりと歯と歯の間にデンタルフロスを入れていきます。歯周ポケットのなかに1ミリぐらいまで入れるようにして、前後に動かしながら歯垢や食べカスを取るようにしてください。

 デンタルフロスに歯垢や食べカスがついた場合は、指に巻いたフロスをずらして使うようにしましょう。

 デンタルフロスも歯間ブラシと同様に、歯と歯の間隔が狭いところに無理に押し込もうとすると、力がかかりすぎて歯茎を傷つけてしまうことがあります。デンタルフロスをゆっくりやさしく動かしながら歯茎を傷つけないようにしましょう。

 歯間ブラシもデンタルフロスも上手に使えるようになるには、正しい感覚をつかむ必要があります。できれば最初は歯科クリニックで歯のクリーニングをお願いし、その際に歯科衛生士に正しい使い方の指導を受けるといいでしょう。歯間ブラシやデンタルフロスの力の入れ加減は、実際にやってみないとわからないためです。

 また、選び方、使い方で何か疑問に感じた点があれば、遠慮なく歯科衛生士に質問しましょう。

●歯ブラシはバス法で歯を磨く

 歯間ブラシ、デンタルフロスと終わったら、歯ブラシでしっかりと磨きます。

 歯磨きの方法にはいくつか種類があり、ここでは最も基本的な「バス法」をご紹介しましょう。

 バス法は簡単です。まず、歯に対して45度の角度で歯と歯茎の付け根にブラシの部分を当てます。その状態で、軽い力でブラシを左右に微振動させながら1本ずつ丁寧に磨きます(図4参照)。


[図4]歯ブラシの「バス法」の磨き方

 歯茎の境目だけでなく、歯茎の部分も軽くブラッシングするようにしましょう。それによって歯を支えている歯槽骨全体の血行が改善され、歯茎がより強くなっていきます。

 歯磨きで気をつけていただきたいのは、ソフトなタッチで磨くこと。目安はだいたい100グラムぐらいの圧力です。100グラムといってもイメージしづらいでしょう。試しに手の甲に歯ブラシを当ててみてください。歯ブラシの毛先が押された力で曲がっている場合には、力の入れすぎです。

 図4のように、歯ブラシを前後に動かして初めて毛先が折れるくらいの状態が100グラムの目安です。押すというより、やさしくなでるという感覚ですね。これをしばらく繰り返していると、適正な力加減がわかるようになります。可能であれば調理用のはかりなどに、歯ブラシを当てて100グラムの目盛りまで押してみてください。強い力でないことがわかることでしょう。

 実際には必要な力の3~5倍の力で歯を磨いている人が多くいらっしゃいます。一生懸命歯磨きをした結果、歯茎が傷ついて腫れて出血などしては本末転倒です。ぜひ、100グラムの力を体感したうえで歯磨きをしてください。

福田真一(福田デンタルクリニック院長医学博士)
1959年、兵庫県神戸市生まれ。栄養科学研究所(当時)の所長・蓮田康弘氏、日本綜合医学会の元会長・甲田光雄氏に師事する。93年、「福田デンタルクリニック」(大阪市)を開院。口腔医療と全身疾患の関係を研究した「トータルヘルスケア・コーチング(福田式11箇条)」を取り入れ、患者様に提案。スタッフ全員に食養指導士の資格保有を義務付け、食養について専門的なアドバイスを行っている。2011年には医療者が必ず直面する「命」の問題に向き合うために、一般財団法人大阪国学院にて神職資格を取得。2023年現在、「福田デンタルクリニック」は紹介患者99%、リピート率98%、全国から1万人の患者が訪れる大人気のクリニックとなる。

あさ出版
2023年7月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

あさ出版

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