「男の子の長い髪は変」と我が子が言い出したらどうする? 親がやりがちなNG行動も

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田中俊之先生

「男の子なのに長い髪の毛なんて変だ」

 自分らしさを尊重しようという方向に社会が動き始めた昨今、子どもの容貌もひと昔前とは変わってきた。長髪をなびかせて歩く男の子を街で見かけることもある。もし、それを見た我が子から「変だ」なんて否定するような言葉が出たら、親はどう行動すべきなのだろう。

 つい、「そんな風に言うんじゃない!」と叱って終わりにしがちな方も多いのではないか。しかし、それで子どもに「何が問題なのか」がきちんと伝わるのだろうか。

 ジェンダー論・男性学を専門とする大妻女子大学の田中俊之先生は、『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』(新潮社)の中で、子どもにジェンダーについて伝えるときのアドバイスを語っている。

 子どもが他者を尊重し、自分自身も大切にできるようになるために、親が気を付けたいこととは?

 ※以下は『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』を引用、再構成したものです。

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「(絵本の主人公の)“みー”は、ズボンをはいているから男の子なの?」

 子どもにこのような質問をされたら、ジェンダー(生物学的な性別ではなく、社会的・文化的につくられる性別)について一緒に考えるチャンスです。「どうして、みーが男の子(女の子)だと思ったの?」と聞いてみると良いでしょう。「優しいから女の子」「ズボンをはいてるから男の子」など、その子なりの理由があるはずです。

 たとえ親や保護者の考えと異なっていたとしても、頭ごなしに否定しないでください。

 子どもは自分なりに、男の子はこうだ、女の子はこうだ、というジェンダーの規範を構築して、それが正しいと思っているので、混乱してしまいます。

 ジェンダーを考える上で大切なのは、「枠の外」があると伝えることです。

 我が家の3歳の息子は、「かわいいのは女の子みたいだから嫌だ」と言って「かっこいい」と言われたがります。そんな時は、「“かっこいい”と“かわいい”が両方あったら、2倍でお得じゃない? 人生が楽しくなるよ!」と伝えています。

 また、子どもを理詰めで説得するよりも、自然にストーリーに落とし込まれているものを与えることで、「枠の外」を受け止めやすくなります。

「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」という従来のジェンダー観と異なる、「そうじゃない」物語を繰り返し聞くことで、「女の子だって、積極的でいいんだ」「男の子だって、かわいいものが好きでいいんだ」と理解しやすくなる。『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』のような絵本を物語として繰り返し読み聞かせるのは、とてもいいと思います。

 子どもがお友達など周りから従来のジェンダー観に基づく考えを受け取ってくることもあるでしょう。その時も、「あなたは、こういうのが好きなんだね」「お友達は、そう考えるんだね」と、決して否定しないことです。自分が否定されないとわかれば、相手のことも否定しなくなるでしょう。

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 親は自身の考えと異なった言動を子どもがとったとき、「間違ったこと」として頭ごなしに否定するのではなく、「あなたはそう思うんだね」と一度受け止めてあげることが大切だという。冒頭の例で言えば、「男の子なのに長い髪の毛なんて変だ」と子どもが言ったとしても、「あなたは変だと思うんだね」と一度受け止めた上で、性別を問わずいろんな髪型の人がいるという、「枠の外」についてを伝えれば良いのだ。

 親が「いきなり否定するような行動」を避けることが、子どもの「他者を受け入れる心」につながるのだろう。

田中俊之(たなか・としゆき)
大妻女子大学人間関係学部 准教授。ジェンダー論、男性学を主な研究分野とする。『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』監修者の一人。

Book Bang編集部
2023年7月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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