【産経の本】『都道府県別 陸軍軍人列伝』藤井非三四著

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■出身地でたどる人事の裏側

日本陸軍の軍人伝は、これまでも多数刊行されているが、ユニークな一冊が加わった。陸軍人事研究の第一人者が、陸軍のみならず日本の針路に影響を与えた軍人たちの人間関係を「47都道府県別」という新たな角度から読み解いている。

対象は明治4年の建軍から昭和20年の敗戦まで、七十数年に及ぶ帝国陸軍史に名を刻む四百数十人。

軍人を出身地で追うと、面白い事実が見えてくる。例えば、俗に「陸の長州」といわれているが、実際はどうだったのか。陸軍大将全134人中、山口出身者は19人で断然トップ(2位は鹿児島の15人)。しかし、先の大戦を戦った山口出身の陸軍大将は寺内寿一ただ一人。同県出身将官も300人弱で、実は東京出身者の方が100人ほど多いのだ。

また、満州事変勃発時と敗戦時の陸相・参謀総長コンビは、いずれも大分出身の大将だった。

明治期を除けば「藩閥」には大きな影響力はなかったようだが、士官学校の出身期、出身兵科に加え、出身地で陸軍人事を見ていくと思わぬ相関に驚かされる。上司と部下、同僚などの人間関係の背後には、県民性や相性といったものが潜んでいたことも見て取れる。(光人社NF文庫・1760円)

産経新聞
2023年8月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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