【産経の本】『海の武士道 敵兵を救った駆逐艦「雷」艦長』惠隆之介著

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■英兵422人救助の戦中秘話を発掘

先の大戦中、インドネシア・スラバヤ沖海戦翌日の1942年3月2日、海上には撃沈された多数の連合軍艦艇の将兵が漂流していた。日本海軍は「武士道」に基づき、敵の漂流者や病院船はいかなる場合でも攻撃しなかった―。本書は敵兵を救助した駆逐艦「雷(いかづち)」艦長、工藤俊作少佐の気概を存分に伝えている。

敵潜水艦から攻撃されるかもしれない危険海域だったが、工藤艦長はためらうことなく停船し、乗員をはるかに上回る英兵422人を救助。重油で汚れた英兵の体を拭き清め、熱いミルクや乾パンを支給した。

さらに、英士官全員を前甲板に集めて敬礼し、流暢な英語で「私は英国海軍を尊敬している。本日、貴官らは帝国海軍の名誉あるゲストである」と健闘を称えた。一時は死を覚悟した英海軍のフォール元大尉は「奇跡がおこった」と回想する。

工藤艦長はこの秘話を家族や知人にも語ることはなかった。救助されたフォール氏が66年後に来日し、艦長の墓前で感謝の祈りを捧げるシーンは感動を呼ぶだろう。

著者は防衛大学校を卒業後、艦隊勤務をした元海上自衛官。フォール氏の依頼で艦長の遺族や墓所を探し当て、奇跡の物語をサポートした。(光人社NF文庫・1300円)

産経新聞
2023年10月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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