意外と多かったお色気スタンプ
昭和初期に「駅スタンプブーム」が日本中に沸き起こったことは前回の記事でお伝えした通りである。
今でも十分通用するモダンなデザイン、「カワイイ」と人気が出そうなイラストの数々を見ると、当時ブームが起きたのも納得である。
同様に今も昔も変わらない、という印象を与えるのがお色気要素への根強い人気だ。
基本的に各駅、各地の名所名産をイラストにしているものの、どうも隙あらば「水着女性」とか「ちょっと色っぽい女性」を入れようという勢力の存在が感じられるのである。おそらく今日であれば、「商品化は許せない」と糾弾されることになる可能性大なのだが、当然、当時はそんな声は一切あがっていない。
戦前の駅スタンプ1400点を収録した労作『解説つき 戦前の印影コレクション 駅スタンプ大図鑑』(田中比呂之編著・世界文化社)から今回は、「戦前のお色気スタンプ」を紹介してみよう。
海水浴場に水着姿の女性
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- 駅スタンプ大図鑑
- 価格:3,190円(税込)
わが地元こそが「世界最古の海水浴場」である、と高らかに宣言しているのは、愛知電気鉄道(当時)大野町駅である(1)。実際に世界最古かどうかは諸説あるものの、「順徳天皇の頃から海水浴場だった」という主張を信じれば、間違いないということになる。
水泳帽をかぶった水着女性の他、名産の海老、木綿、大野城址などなどを詰め込んだデザインとなっている。
海辺に横たわる婦人が馬を眺めているかのような、ちょっとシュールなスタンプは、関西本線の富田浜駅(三重県)(2)。
霞ヶ浦競馬場と海水浴場があるからで、注目は円形ではなくハマグリ型という点。名産が焼ハマグリなのだ。
水着以外にも「戦前のグラビア」的なイラストはある。スタイリッシュな少女たちが高く脚を上げているのは福知山線・宝塚駅(3)。由来の説明は不要だろう。少女たちの歌劇というビジネスモデルそのものが画期的だったのは言うまでもない。これは今日のアイドルグループの源流とも言えるだろう。
駅長さんが考えていた
温泉地の場合は、入浴シーンを盛り込みたくなるのが人情というものか。愛媛県、道後温泉関連のスタンプ3種はいずれもそういう趣向となっている(4)~(6)。
同様にセクシーさを意識している気配があるのは、志摩電鉄(当時)・賢島駅の「海女(あま)さん」を描いたもの(7)。
さて、これらの図柄はどのように選定されていったのだろうか。
「本書は、戦前の雑誌『旅』での紹介記事をもとにしています。元の記事には、スタンプの考案者が書かれていることもあり、多くは駅長の名前なのですが、地元小学校の先生や地元の名士のような人のこともあったようです」(編著者の田中比呂之さん)
当時の鉄道オタクたちがこれらイラストに萌えていたかどうかの記述は残っていないようだ。
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