「自分軸で主体的に生きろ」っていわれても…わからないときに効く「2分だけ日記」

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「自分軸で主体的に生きろ」っていわれても…わからないときに効く「2分だけ日記」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

医学部志望で2浪し、経済学部を出た後、銀行員を21年、46歳で転職してエグゼクティブ・サーチ・コンサルタント兼会社経営者になって15年、第3の人生は61歳から僧侶として大寺院の経営にあたっています。(「はじめに」より)

と、『何度でもリセット 元コンサル僧侶が教える 「会社軸」から「自分軸」へ転換する マインドセット』(安永雄彦 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者はいかにもユニークなキャリアの持ち主。

しかし、最初からそうしようと思っていたわけでも、戦略的にキャリアを切り拓いてきたわけでもないようです。いろいろな野心を抱き、さまざまにチャレンジし、失敗しながらも好奇心のまま進んできた結果、いまある場所にたどりついたにすぎないというのです。

ただし、あとから振り返ってみるとつねに一貫した「自分の軸」があることにも気づいたのだとか。それは “軸”を持っていたこと。そして、そのような経験を経てきたからこそ、あえて次のように訴えるのです。

私がこの本で主張することをひとことで言えば、「自分の軸をもって主体的に自分の人生を生きよう」ということです。

そして、「失敗を恐れず、チャレンジして、そこから学び、次の成長に向かって少しでも行動を起こしてゆこう」ということを皆さんに伝えていきたいと思います。

ある意味私が、若いころの自分に課してきたことを、読者の皆さんにもすすめているわけです。(「はじめに」より)

つまり、「自分の軸」こそが重要なポイントだということ。そこで、きょうは第3章「『自分の軸』を見つける」を参考にしながら、「自分の軸」を見つけるために考えておくべき点を探ってみたいと思います。

「自分の軸」は必ず見つかる

「自分の軸」を見つけようといわれたとき、どうしていいかわからず戸惑う方も多いのではないでしょうか?

しかしそれは、自分がこれまでまじめに組織のために尽くしてきた証拠でもあるでしょう。いいかえれば、これまでは「会社の課題」と「自分の課題」をほぼ同義として重ねてきたということです。

「会社の課題」と「自分の課題」は不可分の関係にあるので、「会社の軸」に合わせて成功するために努力を続けることも大事な人生の一部であるはず。ただし、それはあくまで一部にすぎず、全部ではないということも忘れるべきではないと著者は述べています。

たとえば会社員として順調にステップアップしていたとしても、ある日突然、役職が外されたとしたら? 強固なものだと信じて疑わなかった評価や期待が突如として崩れ去ったとしたら、「自分はなんのために生きてきたのだろう」と途方に触れても無理はありません。

しかしそれでも、「大丈夫です」と著者は太鼓判を押すのです。

今はただ見えづらくなっているだけで、あなたの中には必ず「自分の軸」が育っている。あなただけの固有の、生きる道標となる軸が存在しています。

答えはあなたの中にすでにある。あとは丁寧に見つけて、磨いて、生かすだけ。(72ページより)

しかも、「自分の軸」を見つける方法は意外と簡単なのだといいます。(70ページより)

ライフラインチャートで自分の「波」を描いてみる

「自分の軸」を探すための第一のステップは、自分を客観的に観察する時間を持つこと。それも短期的視点ではなく、長期の視点で見つけてみることが大切だそうです。

具体的には、「ライフラインチャート」がおすすめです。

これはグロービス経営大学院に通う学生にも書かせている、自己認知を促進するワークの一つ。過去の人生とキャリアを振り返りながら、自分の「心」がどういうときに喜び、エネルギーの出力が最大化するのかを確認するのに役立ちます。

方法はいたってシンプルです。

真っ白な紙、できればA3サイズくらいの大きな紙を用意して、縦軸・横軸から成る2次元グラフの枠を描きます。

横軸は時間で、縦軸は「心の充実・幸福度」。縦軸には、0を起点にプラス10からマイナス10までのメモリを振ってください。(73〜74ページより)

そこに生まれてから現在に至るまでの出来事を書き入れ、そのとき心はどれくらい満たされていたか、あるいは元気を失っていたかのレベルを点で表記。そして最後にすべての点を結べば、1本の波形ができあがります。

そうすれば、「自分がどんなときにワクワクして、どんなときにつらいと感じるのか、それはなぜなのか」という自問自答のきっかけをつくることができるわけです。(73ページより)

内面と向き合う「2分だけ日記」

さらに、著者がもうひとつ勧めているのが「2分だけ日記」。いうまでもなく、紙とペンさえあればどこででもできる手段です。

まず、テーマを一つだけ決めます。「5年後までにやりたいこと」など未来に向けたテーマがいいでしょう。

あとは思いつくままに、ペンを走らせて書き留めるだけ。きれいな日本語でなくてもよし。論理が破茶滅茶でも構いません。

自分に嘘をつかず、頭に浮かぶ言葉を書くだけです。図式や絵で表現してもいいでしょう。(79ページより)

ポイントは制限時間を決めることで、しかも2分で充分。時間無制限で始めると混乱しかねないので、短時間でスパッとやめるのがちょうどいいわけです。

それに実際のところ、わずか2分間でも意外といろいろなことばが出てくるものです。描きながら、「自分はこんなことを考えていたのか」と、いろいろなことを発見できるかもしれません。

目的は、「頭のなかの考えを外に出すこと」内面にあるモヤモヤを、手を動かして吐き出すことに意味があるのです。そのため、紙の上に踊る文字面の意味をつなげたり、ロジックを整えようとする必要はなし。書き出すだけで、内面を見つける効果が期待できるからです。

「思いのままに書く」という手法は「ジャーナリング」とも呼ばれ、マインドフルネスを高める手法としても有名。著者は、「坐禅」にも似た効果があるのではないかと考えているそうです。(78ページより)

現在の著者も、本書の執筆を通じて「自分のこれからの生き方の方向性」を再検討しているのだそうです。

当然ながらその目的は、自分をさらなる成長へ導くこと。だとすれば読者である私たちもまた、本書を活用することによって著者と同じ目線で成長を目指していくことができるのではないでしょうか?

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

メディアジーン lifehacker
2024年1月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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