猫の「あごニキビ」「ずっとある口臭」大げさかな?と思っても 実は見逃せない体調不良のサイン【専門医に聞く】

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あくびをする猫
愛猫の体調の変化は心配(※写真はイメージです)

「食いしん坊の愛猫が今朝は食べなかった」「いつもと違う場所で丸まって寝ている」など、ちょっとした異変も気になるのが猫の飼い主。ただ、「些細なことで連れていくのは獣医さんにとって迷惑かも」と足踏みすることも。そんな愛猫家の悩みに、獣医師兼カウンセラーとして活躍する宮下ひろこ先生が答えます。

※本稿は『獣医さん、聞きづらい「猫」のこと ぜんぶ教えてください!』(宮下ひろこ・著/日東書院本社)から一部抜粋しています。

ふだんとちがう行いは病気や不調のシグナル

 何か気になることや、いつもとちがう感じがするといったときは、迷わず病院に連れていきましょう。「大げさすぎるかな」と心配する必要はありません。獣医師に状態を話して、身体検査などで何も問題がなかったとしたら安心して、ついでに獣医師と猫好き談義をして、いろいろと猫情報をもち帰ってくればよいのです。

 吐いたり下痢したりといった明らかにわかる症状がなくても、朝はいつもごはんが欲しいと近づいてくるのに来なかったとか、毛づくろいをしなくなったとか、いつもとちがう場所で丸まって寝ているなど、日々の行動とちがうことが数日続くのであれば獣医師に相談してください。

 例えば、すごく食欲があるのに痩せてきたから心配で……と来院する飼い主さんがいますが、話を聞くとかなり前から少しずつ体重の減少は気になっていたり、よく鳴いて甘えてくるといった行動の変化にも気づいていたりします。食欲はあるし、年齢による老化だと思って様子を見ていたら、じつは甲状腺の病気だったということもあります。


体重のちょっとした変化にも気を配ろう

 うちの猫は体重が4kgくらいですが、もし200g減ったとすると全体の5%減ることになるので、60kgくらいの人間で換算すると3kg減少です。人間で何も特別なことをしていないのに3kgも減ったとすると、何かおかしいと感じるはず。高齢猫でカロリー制限をしていないのに、体重が3か月間で5%以上減少しているときは、病気が隠れている可能性があります。猫での数百グラムはかなり大きな変化ですので、日頃から体重はチェックしておきましょう。

 人間は自分で病院へ行けますが、動物は飼い主さんが異変に気づいてくれないと治療を受けられません。何となくいつもとちがう、という感覚的なことが動物たちの命を救うセンサーとして役立つことがあるので、人の感覚はあなどれません。いちばん近くにいる飼い主さんだからこその特別センサーで、病気の早期発見につなげていきましょう。

猫は元気なふりが得意


 とはいえ、病院に行くことがそう簡単ではない場合もあります。まず飼い主さんの仕事や学校など、時間的な問題。金銭的な問題。病院が遠いとか、交通手段の問題。そして、猫さんによっては病院が大の苦手でストレスを感じる場合など、さまざま。

 もちろん命に関わるとわかっていたら、何をおいてもどうにかして連れていくとは思いますが、それ以前のわずかな変化などの場合、どうすべきか悩みますよね。

 左の表は、病院へ連れていくタイミングを症状別に分けたものです。猫さんの年齢や病歴、体質、生育環境などによってちがってくるのでそれらをふまえ、あくまでも目安として参考にしてください。CMにもありますが猫というのは、なぜか元気なふりが得意です。常日頃から観察し、小さな異変を見逃さないようにしましょう。

 そして「あのとき連れていけばよかった」と後悔しないためにも、変化や気になることがあったときに、すぐ動ける準備をしておいてほしいですね。

 少なくとも、下記の深刻度★の状態で連れていったとしても「大げさだ」なんて思う獣医師はいないと思ってください。深刻度★★★★の場合は気づいたらすぐ、夜間救急でも連れていってほしい状態です。


毛づくろいによる脱毛は、3日以上改善しなければ病院へ。ただし、気づいてすぐ病院へ行っても大げさではない

〈猫の「異変」深刻度チェックリスト〉

【深刻度★★★★】今すぐ病院へ
●ぐったりしている ●誤飲誤食 ●嘔吐が止まらない、連続する ●24時間近く排尿していない ●開口呼吸 ●後ろ足が立たない ●変な声で鳴く(何かを訴えるような声で落ち着かない様子) ●てんかんのような発作 ●急なよだれ ●急ないびき ●耳や口の粘膜が黄色や白 ●舌が青白い ●体や耳が熱い ●顔が腫れている(急変) ● 高所からの落下
※上記はあくまでも目安です。元気、食欲がない場合や複数の症状が見られる場合は、深刻度に関係なく早めの受診をしましょう。

【深刻度★★★】翌日には病院へ
●1日に3回ほど嘔吐 ●血便・血尿 ●体表にわかるくらいのできもの ●おなかを触ったときにしこり ●繰り返すよだれ ●耳を激しく搔く ●耳の腫れ ●爪が折れた(出血は止まっている) ●歩き方がおかしい
※上記はあくまでも目安です。元気、食欲がない場合や複数の症状が見られる場合は、深刻度に関係なく早めの受診をしましょう。

【深刻度★★】1~2日経っても改善しなければ病院へ
●食欲がない(いつもの半分以下) ●くしゃみ ●涙目・目やに ●あごニキビ ●一時的な発作やふるえ(症状が治っている) ●繰り返す嘔吐・下痢
※上記はあくまでも目安です。元気、食欲がない場合や複数の症状が見られる場合は、深刻度に関係なく早めの受診をしましょう。

【深刻度★】3日以上改善しなければ病院へ
●大きさが変わらないイボ ●下痢 ●ずっとある口臭 ●食欲にムラがある ●足や手に大きなハゲ ●毛づくろいによる脱毛 ●耳の汚れ ●急に増えたフケ ●便秘
※上記はあくまでも目安です。元気、食欲がない場合や複数の症状が見られる場合は、深刻度に関係なく早めの受診をしましょう。

宮下ひろこ
獣医師/動物病院専任カウンセラー。日本大学獣医学科卒業後、小動物臨床に従事。その後心理学やカウンセリングを学び、2011年よりペットロスなどのカウンセリングを行う「動物病院専任カウンセラー」として動物病院に勤務。現在は、獣医師はじめ動物病院スタッフのキャリアに関わるコーチングや心理カウンセリングも行っている。一般社団法人日本産業カウンセラー協会認定産業カウンセラー。一般社団法人日本グリーフ専門士協会認定グリーフ専門士。

イラスト・たまゑ

辰巳出版
2024年2月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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