『夜の淵をひと廻り』真藤順丈著
[レビュアー] 産経新聞社
〈この世界が住みやすくなるように戦う人たちのことを“ヒーロー”と呼ぶんです〉。町についての情報を知り尽くしている代わりに「全住民へのストーカー」と煙たがられる詮索魔のシド巡査が交番勤務の体験を書きつづる、という体裁の連作ミステリー。住民の奇行に振り回され、狂気に当てられ、悪意を突きつけられる。ついに刺されて生死の境をさまよう。〈警察官だって怖いものは怖いんだよクソったれ〉。全編を貫くダークな味わいは著者ならでは。長年にわたる報復の連鎖、悪意のスパイラルを追い続けた果てに、シド巡査がたどりつくのは-。(KADOKAWA・2000円+税)