児童書 『金魚たちの放課後』河合二湖著 10代の揺らぎを繊細に
[レビュアー] 産経新聞社
和金(ワキン)、出目金(デメキン)、琉金(リュウキン)など、ぷっくりした金魚が泳ぐ印象的な装丁にひかれた。金魚養殖池がある東京東部の町が舞台。第1部は、ザリガニやカメなど今まで飼った生き物がすぐに死んでしまい、自分は「死に神の指」を持つという小学5年の少年が主人公だ。理科の授業で金魚を卵から育てることになり、1年以上生きるかどうかを転校生の少女と賭けをする。
弱った金魚を塩水に入れたり、皮膚病に効く薬を水槽に加えたり、小さな命に一喜一憂する日々。しかし、何匹かはあっけなく死んでいく…。
誰もが学童期に経験する挫折と無力感にどう折り合いをつけるか。別居中の父と夜勤の多い母、「飼育下手は遺伝」と割り切る姉は頼りにはならない。少年を前向きにさせたのは「何百匹、何千匹飼わないと法則とか傾向は分からない」と話す転校生の少女だった。
第2部は中学2年になった転校生の視点から友人との出会いと別れを描く。思春期特有の友情の甘さとほろ苦さがこみ上げる。(小学館・1400円+税)