<東北の本棚>実像とのギャップ探る
[レビュアー] 河北新報
仙台藩祖の伊達政宗は戦国武将の中で上位の人気を誇るが、市民が抱くイメージと実像にはギャップがあるとされる。本書は影響力が大きい時代劇メディアの検証を通じ、政宗がどのように描かれ、今後はどのように描かれるべきなのかを考える。
垣根を越えて時代劇メディアの在り方を考える時代考証学会が2014年、仙台市博物館で開いたフォーラムの記録集が中心だ。2部構成の講演と、「それぞれの伊達政宗」と題するパネル討論で構成する。
1987年、NHKが放映した大河ドラマ「独眼竜政宗」は政宗の知名度を一気に高めた。演出を担当した吉村芳之氏は「少年時代を丹念に描くことで感情移入しやすくなった」と振り返る。
一方、ドラマは政宗が失明した目に眼帯をしていたという誤ったイメージを与えたと批判される。吉村氏は「主演の渡辺謙さんが撮影の度、右目のまぶたをのりでくっつけたりはがしたりし、まつげが取れてしまった。眼帯をすれば両目が見えて安全なため、限定的に使用した」と明かす。
2011年以降、河北新報日曜版で隔週連載する漫画「独眼竜政宗」。作者の千葉真弓氏は「昔の肖像画には、こう見てほしいという記号が隠されている。それらを読み取り、自分の解釈を加えて登場人物を造形した」と制作過程を説明する。
仙台市史の編さんに長年携わった菅野正道氏は「ずんだ餅や、すずめ踊りの始まりは政宗」と、何でも引き寄せて宣伝する思考が広がっていると指摘。「冷静に評価するべきだ」と注意を促す。
政宗を取り上げた時代劇の変遷やコラムを掲載、政宗の入門書としても楽しめる。
今野印刷022(288)6123=1080円