東芝解体、大手電機8社の危機を徹底分析。沈没組と復活組の意外な評価とは?

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東芝解体 電機メーカーが消える日

『東芝解体 電機メーカーが消える日』

著者
大西 康之 [著]
出版社
講談社
ジャンル
産業/産業総記
ISBN
9784062884266
発売日
2017/05/17
価格
864円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

東芝解体、大手電機8社の危機を徹底分析。沈没組と復活組の意外な評価とは?

[レビュアー] 東京ピエロ

東芝が解体に向かい、日本の電機メーカーが消えようとしている原因は何か?

2年前に世間に驚きを与えた粉飾事件で、東芝の名声は一度地に落ちた。そして、信頼回復もままならないうちに会社を揺るがす巨額損失の発覚。ついに追い詰められた東芝。名門東芝が解体に向かうのは、そして東芝のみならず日本の電機メーカーが消え行こうとしているのは何が原因なのだろうか。

本書では、いつどこで日本の電機メーカーが間違いを犯したかを、日本の電機メーカーの成り立ちから現在までを俯瞰して、構造的に敗因を調査・分析する。

電電公社、電力という「父母」にいつまでも甘えっぱなしだった子ども(=電機メーカー)たち

日本の電機メーカー複数社が現在、国際競争に敗れ続け、危機的状況にあるのは、明確かつ根本的な理由があると著者は指摘している。それは、東電に代表される「電力ファミリー」とNTTを頂点とする「電電ファミリー」という、いわば父母に支えられ続け、自立ができなかったからだ。

電力ファミリーの電力インフラ(原子力・火力発電)と、電電ファミリーの通信インフラの「下請け」が大きなビジネスが本業として成り立っていたため、「電力ファミリー」「電電ファミリー」の電機メーカーは白物家電やパソコン、半導体といった「副業」でいくら損失が出ても、大きな問題にはならなかったのだ。

しかし、電力や通信の自由化が始まり、インフラに投資できる費用が削られ始めると、父母は子どもたちに「仕送り」を与えることができなくなってきてしまう。「親のすね」をいつまでも齧っていた子どもたちは、自立を今求められているが、ぬるま湯に浸かりきっていたため、台頭著しい中国メーカーを含む、世界各国の競合相手に太刀打ちできない状況になっている。

自立に必要な猶予期間が十分与えられていたにもかかわらず、親のすねを齧り続けていた歴代の経営者の責任は重い。本書では、今がまさしく「親離れ」の最後のチャンスとして、「電力ファミリー」「電電ファミリー」に属する各企業を叱咤激励している。

電機メーカーの敗北と第2次世界大戦での日本の敗北。構造は全く同じ

本書は、1冊の名著をモチーフにしている。それは第2次世界大戦における日本の敗北の原因を組織論で解き明かした名著『失敗の本質 日本軍の組織的研究』(戸部良一他・中公文庫)である。

著者は、第2次世界大戦で日本が米国に敗れた理由と、日本の電機メーカーが敗北を続けている理由に共通点があると述べている。

言及されている点を3つピックアップすると、

①グランドデザインの欠如
第2次世界大戦において、米国には「戦争をどのように終わらせるべきか」という明確な目的とビジョンがあったが、日本軍には一切それが見当たらなかった。一つ一つ戦闘においても、全軍で目的を一致させることができず結局は敗れてしまった。

「自分たちがどのように戦うか、どうやって勝利するか」という長期的かつ明確な戦略が多くの日本の電機メーカーに欠けていると著者は述べている。

②コンティンジェンシープランの欠如
事前に描いたシナリオから外れて、何が起こるかがわからないのは軍事戦争でも企業戦争でも同じ。起こりうるあらゆる状況を事前に検証して、緊急時のプランを検討しておく必要がある。

第2次世界大戦における日本軍も、日本の電機メーカーも戦略の取りうるオプションが狭く少なかった。現代では、新しい技術やビジネスが毎日のように生まれている。常に緊急時のシナリオを考えておかねばならないのだ。

③空気の支配
この「空気(ムード)」も大きな敗北の原因であろう。客観的に状況を分析することから目を背け、場当たりなムード的に組織が支配され、皆が盲目的に作戦に従ってしまう。ムードに支配されると、人間は何も言えなくなってしまい、結局は間違いを黙認してしまう。

本書でも、「日本の技術力は優れている」「アジアの国に負けるはずはない」という根拠のないムードが、日本の電機メーカーの敗北に拍車を掛けてしまったと述べている。高度成長期の成功体験に頑なにしがみつき、戦略の転換が遅れたのも、その最たる例だ。その他にも、日本の電機メーカーの没落と、日本軍の敗北の原因に共通する部分について多く記載されている。ぜひ詳細は本書を参照されたい。

今後、生き残り羽ばたく電機メーカーはどこ?

本書内で著者が一貫して主張しているのは、「日本の電機メーカーはまだ戦える」ということだ。どうも、敗北の原因が大きくクローズアップされているので、批判の書として捉えられてしまうかもしれない。でも、著者の真意は、敗北の原因を詳細に分析することで、敗北を繰り返すことなく、新たな未来を踏み出してほしいという、エールに他ならない。

各企業で、設立の経緯も置かれている状況も、取りうる戦略も全て異なる。どの会社が衰退から抜け出して、復活するのか。本書内では、各企業に対してそれぞれ異なる評価がされており、著者が感じている可能性も、異なっているようだ。(著者の各企業への評価が本書の帯イラストに反映されているように感じる。本の帯にも注目してほしい)

日本の電機メーカーとして、東芝、NEC、シャープ、ソニー、パナソニック、日立製作所、三菱電機、富士通。全8社が本書内で分析されている。どの企業に復活の見込みがあるのか? どのような戦略を取るべきなのか? 著者渾身の分析をぜひ本書を手にとって堪能してほしい。

講談社
2017年7月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

講談社

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