史実でも変わらぬ尊氏の数奇な運命

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史実でも変わらぬ尊氏の数奇な運命

[レビュアー] 図書新聞

 昨年、大ベストセラーとなった『応仁の乱』。本書は同じ室町時代に起こった、もっとマイナーな戦乱である観応の擾乱を扱っている。尊氏・直義兄弟だけでなく、子の義詮・直冬、執事の高師直、さらに南朝方まで巻き込んだ全国規模の内戦はいかにして起こったか、どのような結果を生み出したのか。一次資料を重視し、諸武将の戦の行方だけでなく、尊氏・直義の二頭政治から擾乱後の新体制への変遷について詳細に論じていて、特に『太平記』における高氏の悪評、直義の権力への野心やその暗殺説に対して著者が疑義を呈しているところが興味深い。小説やドラマからでなく、客観的な史実からでも尊氏の足利、そして源氏の棟梁としての数奇な運命がうかがえる。(7・25刊、二八八頁・本体八六〇円・中公新書)

図書新聞
2017年8月5日号(3314号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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