王家の墓から死後数カ月のミイラ遺体… サバイバル活劇

レビュー

6
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サハラの薔薇

『サハラの薔薇』

著者
下村 敦史 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041057476
発売日
2017/12/21
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

砂漠を彷徨う考古学者 謎が謎を呼ぶサバイバル活劇

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)

 昨秋、日本の研究グループがエジプトのクフ王のピラミッドに未知の空間があるのを発見、大きな話題になった。エジプトの古代遺跡は今なお多くの日本人を魅了しているが、本書も、日本とエジプトの合同発掘隊が王家の墓で新たな石棺を発見するところから幕を開ける。だがそこから出てきたのは、死後数か月もたっていないミイラだった!

 しかもエジプト考古省は遺物の検査どころか事実の口外さえ禁じてきた。さらに追い打ちをかけるように、発掘隊リーダーの峰隆介が暴漢に襲われる。男は何かの記録を欲していたが、程なくミイラや遺物が武装グループに強奪されたとの報が。幸い、峰はフランスの博物館の仕事でエジプトを離れることになるが、危険は去っていなかった。彼の搭乗した旅客機がサハラ砂漠に墜落、彼はひとまず助かるものの、五人の生存者と徒歩でオアシスを目指す羽目に。

 著者は二〇一四年、江戸川乱歩賞を受賞した『闇に香る嘘』でデビューして以来、謎解き趣向を活かした社会派ミステリーの旗手として活躍中だが、もともとクライブ・カッスラーや船戸与一の冒険小説のファンだった。その点本書は、カッスラーの『死のサハラを脱出せよ』や船戸の『黄色い蜃気楼』にオマージュを捧げた砂漠横断活劇というべきか。

 だが冒頭の石棺のミイラを始め、暴漢の襲撃、武装グループの強奪といった謎の畳み掛けはこの著者ならではのミステリー趣向だ。それはさらに、美貌のベリーダンサー・シャリファや無頼漢のアフマド、サハラの薔薇という言葉の入った謎のメモを持つ日本人・永井等、一癖も二癖もある生存者の面々との踏破行においても随所で発揮される。

 新たな殺人、砂漠の民の登場、そして社会派的なテーマの盛り込みと、ページを繰る手を止めさせないノンストップ・サバイバル活劇。冒険小説ファンはもちろん本格ファンの期待も裏切らない新境地の快作だ。

新潮社 週刊新潮
2018年1月25日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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