絵本『ぴょーん』ミリオンセラー記念! 松岡達英先生を訪ねて新潟県・長岡市へ

インタビュー

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ぴょーん

『ぴょーん』

著者
松岡 達英 [著]/まつおか たつひで [著]
出版社
ポプラ社
ISBN
9784591064764

書籍情報:版元ドットコム

絵本『ぴょーん』ミリオンセラー記念! 松岡達英先生インタビュー

[文] ポプラ社児童書出版局

松岡達英先生
松岡達英先生

「かえるが…ぴょーん!」「こねこが…ぴょーん!」

絵本の中の動物や昆虫たちと一緒に、子どもたちもジャンプしてしまう、ロングセラー絵本『ぴょーん』。2000年の発売から日本だけでなくアジア各国、そしてフランス・ロシア・アルゼンチンまで(!)世界各国で愛される絵本です。『ぴょーん』のお話、そしてただいま制作中の新作絵本のお話をうかがいに新潟県・長岡市に行ってきました。

 ***

小さなころは『絵の天才』!?

――今日は『ぴょーん』のことと、松岡先生が絵本作家になるまでのことを伺いに来ました。『ぴょーん』の中にでてくる動物や昆虫を見ていると、松岡先生が自然豊かな環境で育った影響がうかがえます。先生は、小さなころどんな遊びをしていたんですか?子どものころのお話を聞かせてください。

松岡先生:小学校の頃は、山で栗とかぶどうとかとったりして遊んでたね。高学年のときくらいにオオムラサキをとって、それからずっとチョウに夢中だね、チョウは一番目立つから。あと、うちの裏のほうにある栖吉川(すよしがわ)っていう川がすごく生物が多くて、そこでは水遊びしてたね。アユにあったり、ウナギにあったり、まだタガメもいるころで、水の生きものにも興味をもったんだ。

――今、目の前にも見える、雪におおわれた山々ですね。絵は、そのころから描かれていたんですか?

松岡先生:新聞の余白に欲しいものをちょこちょこっと描いてたよ。自転車とかグローブとかしっかり見てきて描いたんだけど、全然買ってくれなかったね(笑)。親父も絵を描くのが好きで、その絵を見ると「こういう風に描くんだ…」ってうっとりしたし、昔からスーパーリアルな絵が好きだったんだね。小学校2年生くらいの子がリアルに絵を描くと、「若くしてこのリアルさか!」って先生もほめてくれて、だから小学生のあいだは絵の天才で、中学に入ってからだんだん「絵ってこんなもんじゃないな」ってわかってきたんだ。描写力とアートのちがいみたいなものが。

紀さん(松岡先生の奥様):見たもの何でも描きたかったから、校庭にヘリコプターが飛んできたときも、1人だけ教室の外に追いかけていっちゃったりね。

松岡先生:こんなすごいものが来たんだから、クラスのほとんどが飛びだすと思ったんだけどね(笑)

――昆虫だけでなく、飛行機やヘリも好きだったんですね。昆虫は、中学生や高校生になっても、ずっと好きだったんですか?

松岡先生:そうだよ。昆虫の趣味がずっと続くってなかなかなくて、それが続いたのが僕だね。とにかく新しい虫に出会うのが好きなんだ。高校のときに勉強していた化学とか電気とか、目に見えないものは好きじゃないんだね。

アトリエでお出迎えしてくれる、かえるくん
アトリエでお出迎えしてくれる、かえるくん

デザインの仕事から、自然を描くイラストレーターへ

――高校を卒業されたあとは、どうされたんですか?

松岡先生:群馬の高崎に就職しに行ったんだけど、群馬のチョウが見たかっただけなんだよね(笑)。だから、すぐ嫌になっちゃった。そのあと東京で美術の学校に通って、デザインの仕事をするようになって、若い人たちで集まって一緒に展覧会を開いたりしたんだ。そこで出版社の編集者が声をかけてくれて、絵の仕事を始めたんだね。

――楽しそうですね!それから、だんだんと絵本のお仕事をされはじめたんですか?

松岡先生:うん、世界中いろんな場所に取材に行ったよ。取材に行くと、どんなところでも、バス停でも、下を見ると草があって、生きものがいるじゃない。それだけで楽しいんだよ。自然が好きになると、全然退屈しなくていいよ。

紀さん:車で帰ってきたら、すごい丸太みたいなヘビがいたこともあったわね。そうしたらこの人が、写真撮るって言いだして……私は「開けないでー!」って。

松岡先生:オーストラリアのニシキヘビだね。

――先生にとっては、またとないチャンスですもんね(笑)。

絵本『ぴょーん』まつおかたつひで[作・絵]ポプラ社
絵本『ぴょーん』まつおかたつひで[作・絵]ポプラ社

飛行機で思いついた『ぴょーん』のアイデア

――つづいて、2000年に発売させていただき、今年ミリオンセラーになりました『ぴょーん』について、制作のエピソードや、先生のお気に入りのポイントを教えてください。

松岡先生:こんな読みやすい本ないよね。だれでも読めるし。恐竜の絵本を作る取材でアメリカに行って、その帰りの飛行機に乗っていたとき、急にゆれて、体がぴょーん!と上がる感じがしてね。そのとき、いろいろな生きものが「ぴょーん!」と飛ぶアイデアをひらめいたんだ。

――出てくる動物はすぐに決まったんですか?

松岡先生:動物は、ひとつ出てくるとどんどん出てきて、すぐに決まったし、跳べないカタツムリのアイデアも、にわとりとひよこを黒いページに置くのもすぐ決まったよ。どの絵本もそうだけど、売れるとか、売れないとかそんなこと考えないで、自分が楽しめればいいと思って作ってるからね。

――先生は悩んだりしないで、どんどんアイデアを思いつくんですか?

松岡先生:アイデアがどんどん出てくるのには自信があるよ。外国の絵本やイラストレーションの本もたくさん見ていたしね。でも『ぴょーん』はやっぱり、すごく新鮮なアイデアで作ってるよね。集中して考えたのかな。あと、たくさん描きこんで、手のかかる絵本をたくさん描いてたから、シンプルな絵に憧れてたんだ。描くのもちょっと簡単になるし(笑)

――簡単なんて、そんな……(恐縮)。『ぴょーん』の読み聞かせをすると、子どもたちがかならず跳びはねますよね。先生は日本全国で子どもたちが跳んでいるのをどう思いますか?

松岡先生:絵本をすごくたくさん作ってきたから、そのご褒美かなって思ってるよね。作為的に作った本じゃないからね。いろんなところで読み聞かせなんかを熱心にしているけど、僕の頭の中では、たったひとりのためにその本があればいいと思っていて、あんまり大勢のことを考えて作るわけじゃないんだ。

絵本『バッタロボットのぼうけん(仮)』の原画
絵本『バッタロボットのぼうけん(仮)』の原画

新作は、新しい画法にチャレンジした意欲作!

――今、先生が描かれている新作『バッタロボットのぼうけん(仮)』ですが、原画を見せていただいて、ち密に描かれた自然の迫力にただただびっくりしました。

松岡先生:今回はちょっとだけ新しい描き方をしていて、背景に写真を貼って、その上から絵の具で描いたり、ロボットも貼り絵をした上から描いたりしてるんだよ。

絵本『バッタロボットのぼうけん(仮)』の原画
絵本『バッタロボットのぼうけん(仮)』の原画

――(近くで原画をよく見ると、たくさんのパーツが貼られて、組み合わされていて、改めてびっくり……)。ほんとだ、このバッタロボットも赤い画用紙の上から、絵具で色を足したものを貼っているんですね……。なぜ、世界を旅する乗り物ロボットをバッタにされたんですか?

松岡先生:バッタが跳ねるのを見るのが好きで、スマートに跳ぶ姿がすごくかっこいいから。ほかの昆虫は重そうだし、トンボも翅(はね)がやぶれちゃいそうでしょ。

絵本『バッタロボットのぼうけん(仮)』の原画
絵本『バッタロボットのぼうけん(仮)』の原画

――『ぴょーん』よりは大きい子向けの絵本ですが、先生は赤ちゃん絵本をつくるときと、大きい子向けの絵本を作るときは、ちがう気持ちで描かれるんですか?

松岡先生:全然ちがわないよ。赤ちゃん絵本を作るときは、赤ちゃんの顔をよーく見て、アイコンタクトをとって、じーっと観察するけど、同じ自然を描いているから、リアルに描いている絵本だって、赤ちゃんにも見てほしいんだ。『バッタロボットのぼうけん』も、色んな歳の子が楽しんでくれると思うよね。ずっと昆虫が好きで、自然が好きで、絵本を描く仕事をしているけど、本当に楽しい仕事だよね。こんなおもしろい仕事なのに、誰か僕みたいなことやらないのかなって思うよね。世界中に自然があるから、無限に描くことがあるよね。

――本当ですね。作家さんの視点によって、きっとさまざまな自然の切り口があるんだろうなと思います。

小さいころから自然に親しみ、昆虫や動物が大好きだった松岡先生にたくさんのお話を伺い、その後長岡の自然散策にも連れてっていただき、取材を終えました。

ポプラ社児童書出版局

ポプラ社
2018年4月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

ポプラ社

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