<東北の本棚>アテルイの血 藤原氏へ

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えみしの城柵

『えみしの城柵』

著者
佐藤昭浩 [著]
出版社
金港堂出版部
ISBN
9784873981192
発売日
2017/12/01
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>アテルイの血 藤原氏へ

[レビュアー] 河北新報

 前九年の役と後三年の役、平安時代に起きた奥羽の戦乱を蝦夷(えみし)側の視点で描く。朝廷側からの収奪にあえぎながら、先人たちはある時は戦い、ある時は妥協して自らの楽土を築こうとした。底流にあるのは古代東北の英雄・アテルイの血と説く。
 毘沙門天の前で横たわる若き武将・藤原経清の前に現れたのは蝦夷の族長アテルイの幻影だった。「その方に子を授ける。この地の悪(あ)しき火の穂を消しうる一滴の露であるぞ」と告げるところから、物語は始まる。生まれた子の名を清衡と言った。
 多賀城に置かれた陸奥国府。朝廷より派遣された長(おさ)は、しばしば租税を私したり、無実の人を亡き者にしたりした。鎮守府将軍・源頼義と在地豪族の安倍貞任が戦ったのが前九年の役。安倍氏は敗れ、共に戦った経清は厨川柵で斬首される。20年後、後三年の役で今度は頼義の子・義家が、成人した清衡の力を得て在地の清原氏を出羽の金沢城で破る。
 前九年の役と後三年の役は、源氏と在地豪族の対立にそれぞれの一族の勢力争いから内紛、政略結婚、愛憎劇まで絡んで極めて複雑な経過をたどる。前半の主役は経清、後半は清衡としているが、それならばこの父子の生き方、思想を軸とした物語の展開がほしいところだ。
 結果として清衡は生き残り、奥州藤原三代の祖を築く。清衡は打ち続く戦乱で血にまみれ、全ての肉親を失う。仏都・平泉の浄土建設の訳は、そこにあったのであろう。底流にアテルイがいて、奥州藤原氏につないだところが著者の独創。
 著者は1960年石巻市生まれ。経営コンサルタントの傍ら歴史小説を書く。
 金港堂出版部022(397)7682=1620円。

河北新報
2018年4月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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