【児童書】『やまのかいしゃ』スズキコージ作、かたやまけん絵
[レビュアー] 三保谷浩輝
■遊び心でおとなもホッと…
〈ほげたさんは、あさおきるのが、とてもにがて〉。奥さんのよしこさんがふとんをめくっても、子供たちがとっくに学校に行ってもぐうすうぴい。
やっと会社に出かけたのは昼過ぎ。電車に乗ってから、トイレのスリッパをはいてきたことや、メガネや会社のかばんを忘れてきたことに気づく。さらに会社はビル街にあるのに、電車は山の中へ。〈こうなったら、きょうは、やまのかいしゃへいこう〉とほげたさん。途中で同じ会社の「ほいさくん」に出会い、一緒に山の頂上へ向かう…。
昭和61年に福音館書店の月刊誌に童話として掲載され、絵本版は平成3年に架空社から刊行。その後長く品切れになっていたが、このほど福音館書店で復刊にあたり原画から製版し直し、文章も見直したという。
はちゃめちゃなストーリー、のびやかであたたかみある絵に、まず子供が喜びそう。そして会社とは逆方向に向かう電車に乗り、〈くうきのおいしい〉ところで働く…遊び心あふれる世界におとなもホッとするはずだ。(福音館書店・1500円+税)
三保谷浩輝