<東北の本棚>小藩の悲哀浮き彫りに
[レビュアー] 河北新報
いわき市を治めた磐城平藩、泉藩、湯長谷藩の戊辰戦争の全体像を詳述した。会津藩などに比べ史料は少なく類書はほぼない。浮かび上がるのは、仙台や米沢など大藩の思惑に巻き込まれつつ、当時の秩序に従って懸命に動く小藩の姿だ。
高校で日本史を教える著者が史料を突き合わせて史実を整理。新政府による会津藩の討伐命令から新政府軍の平潟(茨城県)上陸、磐城平城の落城、3藩の降伏までを時系列で追った。
奥羽越列藩同盟に加わった3藩だが、当初は戦乱を回避しようとしたとみられる。特に平藩は藩主安藤信勇が病気療養のため美濃国にいて新政府軍に従う姿勢を示す一方、国元では藩士が同盟軍に参戦を促される分裂状態となり、難しい対応を迫られた。
仙台藩の指揮下で新政府軍との迎撃戦に臨むが敗退に次ぐ敗退。ついには平城も落ち、藩士らは仙台までの逃避行を強いられる。著者は「奥羽の大藩に翻弄(ほんろう)される小藩の悲哀を痛感させる戦争だった」と評する。
初版は2015年で、戊辰戦争150年に合わせて大幅に増補。平城落城後の動きを加え、平藩が同盟側の一員として律義に戦い続けた経過を明らかにした。
著者は1955年いわき市生まれ。市内の高校を中心に教諭を務め、現在は非常勤講師。
雄峰舎0246(23)1471=3240円。