脚本家・筒井ともみ念願の“児童書” 可能性描く20編

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『いいね!』

著者
筒井 ともみ [著]/ヨシタケ シンスケ [イラスト]
出版社
あすなろ書房
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784751529362
発売日
2018/12/03
価格
1,080円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

人気の女性脚本家による20の連作短編“児童書”

[レビュアー] 立川談四楼(落語家)

 著者は脚本家としてテレビドラマに多くの仕事を残している。アニメーション、映画、舞台に脚本を提供し、小説やエッセイにも手を広げ、世間ではマルチな才能の持ち主と呼ばれるが、作品の掛け持ちはせず、一つ一つこなしてきたという。

 そして著者の長年の夢は「児童書」を著すことだった。体が細く弱く、運動が苦手で、タイトルのように『いいね!』と思えることはあまりなかった。そこで子供心にこう思う。「できることをしてみよう。毎日のごはんの献立を考えたり、母の料理を手伝ったり。雨の日曜日、母といっしょに作るドーナッツやプリンは『いいね!』だった」と。

 かくして20の連作短編から成る児童書という夢を実現させたわけだが、それぞれの話が何人かの児童の視点で描かれ、読み進むに連れてそれがリンクしてゆくことに気づき、本書が緻密な構成を持っていることに驚く。

 誰もが子供時代を経験していて、どんな子がどんなことに「いいね!」を感じるかで、あ、この子は私だと肩入れするに違いない。学校のトイレで流れない巨大なウンコが発見される「『でかいウンコ』って、いいね」には、つい頬が緩む。学校寄席でオナラの噺である『転失気(てんしき)』が鉄板ネタであるように、子供はウンコやそれにまつわる話が大好きなのだ。

 天真爛漫な子、繊細な子のそれぞれに「いいね!」がある。父親が海外に赴任してしまう子もいて、胸がキュッとなるシーンもある。でも子供たちはそれも「いいね!」にする力を持っている。そう、著者は子供の可能性を描いているのだ。

 本書は教師や親による読み聞かせに適している。いや、誕生日など子供の記念日へのプレゼントにも、うってつけだろう。子供たちは20の物語の中にきっと自分を発見するだろうから。

 絵本作家ヨシタケシンスケ氏の絵が相乗効果を生み、大きな魅力になっているのは言うまでもなく、さりげなく力の入った一冊なのだ。

新潮社 週刊新潮
2019年2月7日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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