最小の労力で最大の成果を上げる「インプットとアウトプットの技術」

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知的生産術

『知的生産術』

著者
出口治明 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784534056689
発売日
2019/02/15
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

最小の労力で最大の成果を上げる「インプットとアウトプットの技術」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「知的生産性を高める」とは、いかに効率よく仕事をして成果を出すか、その方法を自分の頭で考え出すこと。

そして「知的生産性」を高めれば、自分も働き方も変わる。『知的生産術』(出口治明著、日本実業出版社)の著者は、そのように主張しています。

生産性を上げるとは、

・「同じ仕事をより短い時間でこなすこと」

・「同じ時間でたくさんの量をこなすこと」

・「同じ時間で仕事の質を高めること」

であり、それはすなわち、人が「成長すること」を意味しています。

そして、知的とは、自分が成長するために社会常識や他人の意見を鵜呑みにせず、原点にさかのぼって「自分の頭で考えること」です。

・「知的」=「自分の頭で考える」

したがって、知的生産とは、

・「自分の頭で考えて、成長すること」

だと僕は定義しています。

(「はじめに」より)

日本は、世界一進んでいる高齢化により、なにもしなくてもお金が出ていくという状況に置かれています。

しかも今後、その流れはさらに大きなものになっていくことでしょう。

だからこそ重要なのは、一人ひとりが自分の頭で考えて、知的生産性を高めること。それが著者の基本的な考え方なのです。

では、どうすれば「自分の頭で考えて、成長すること」ができ、どうすれば知的生産性を高めることができるのでしょうか?

著者によれば、その答えのひとつが、本書で明らかにされている「知的生産術」なのだそうです。

きょうは第3章「最小の労力で最大の成果を上げる『インプットとアウトプットの技術』」に焦点を当て、いくつかのトピックスを抜き出してみたいと思います。

仕事がうまくいかないのは、インプットの量が少ないから

「新しい企画を考えなければいけないけれど、なかなか思いつかない」

「決断を迫られても、とっさに決めることができず、つい先延ばしにしてしまう」

「論理的に考えたり、話したりするのが苦手」

もしもこのような悩みがあるとしたら、その主因はおそらく「インプットの絶対量が少ない」ことだと著者は指摘しています。

仕事が思うようにいかないのは、たいていの場合、インプット不足に原因があるからだというのです。

なにかを思いついたとき、「アイデアが降りてきた」とか「天啓がひらめいた」などと口にする人もいます。

しかし現実問題としてそれは、自分の脳に格納されていたもの(意識していなかったもの)が、なにかの拍子に顕在化しただけのこと。宇宙や異次元からの特別な発信をキャッチしたわけではないということです。

インプットの絶対量が足りなければ、判断の精度も高まらず、発想の幅も広がらないもの。だからこそ、大切なことがあるといいます。

それは、わからないことをそのままにしないで、納得するまで調べること。

そうすることによって、精度の高い情報や検証可能なデータをインプットすることができるわけです。(129ページより)

インプットの量を増やすのは、質の高いアウトプットを行うため

・仕事を溜め込まない

・先輩の指示をいちいち待たない

・自分でどんどん仕事を決めて、形にする

・さっさと片付けて、次に渡す

(134ページより)

かつて日本生命に入社したばかりのころ、著者はこのような仕事をやり方をしていたのだといいます。

それは、「仕事とは、どんどんアウトプットすること」だと考えていたから。

いくらインプットの量が多くても、いくら情報をたくさんかき集めても、いくら知識を膨大にため込んでも、なんらかのアウトプットを出さなければ意味がないという考え方。

特にいまの時代は、仕事をため込まず、どんどんアウトプットしなければ生産性を上げることはできないというのです。

インプットの量を増やすのは、アウトプットをするため。なにかを学ぶにしても、「ただ勉強しているだけ」では意味がないわけです。

大切なのは、インプットしたら、仕事を任されたら、なにかを勉強したら、すぐにアウトプットすること。そして成果を出し、結果を出すこと。アウトプットの回数を増やせば、どんな仕事も必ず上達するということです。(133ページより)

最小の労力で「アウトプット」が最大化する習慣

以前、脳研究者で東京大学薬学部教授の池谷裕二先生と対談したことがあります。僕が、「最近よく、物忘れをします。この前の講演会でも、『ライス元国務長官』の名前が出てきませんでした。どうすれば忘れないようにできるのでしょう?」 とたずねると、先生は、次のようなアドバイスをくださいました。

「忘れないためには、思い出す訓練をすることに尽きます」

「記憶力」は、詰め込むもの、覚えるもの、入力するものではなくて、出力しないと鍛えられないそうです。

つまり、インプットよりアウトプットです。インプットした情報を、意識の部分で取り出すには、マザータング(母国語)に直してインプットすることです。(137~138ページより)

タンスや机の引き出しを整理するのは、しまってあるものを取り出しやすくするため。

人間も同じで、インプットした情報をアウトプットするためには、頭のなかを整理する必要があるということです。(137ページより)

考えは「言語」によって整理される

頭のなかを整理する方法は、なにより「自分の言葉になおすこと」。人間は、言葉を通してしか、自分の考えを整理することができないからです。

そして著者によれば、言語化する方法は次の2つだそうです。

①人に話す

②文章に書いて人に見せる

(139ページより)

具体的にどうしたらいいのか、それぞれについて確認してみましょう。

① 人に話す

おもしろいことがあったとしたら、近くの人を捕まえて話すのがいちばん

たとえば映画好きだという著者も、部屋でひとりで観たビデオの内容はほとんど覚えていないのに、友だちと一緒なら話は別なのだそうです。

映画館を出たあと、喫茶店で内容について感想を述べ合った映画のことは、はっきり覚えているというのです。

おそらくそれは、感動の直後に自分の思いや感情を言語化したことで、思考が整理されて知識が定着したからなのでしょう。

同じように、著者が知る大手総合商社のトップも、知りたいことがあると専門家を探し、すぐ会いに行くのだそうです。そして会社に戻ると秘書を捕まえ、聞いてきた内容をひととおり話し続けるというのです。

このエピソードからもわかるとおり、なにかを知りたいと思ったら、いちばん詳しい人にすぐ話を聞きに行き、インプットしたら周囲に話して頭のなかを整理するべき。

いうまでもなく、それこそが最高の勉強方法だからです。

② 文章に書いて人に見せる

著者がある大学のイベントで「人に話すことで考えが整理される」と話したところ、学生のひとりから「友だちがいない僕は、どうしたらいいですか?」と聞かれたのだそうです。

僕は、次のように答えました。 「書くことでも自分の頭が整理されるので、友だちができるまでは、ツイッター、ブログ、フェイスブックなどに書いて発信したらどうですか。ただし、日記はおすすめしませんが」(140ページより)

なお、日記をお勧めしないことには理由があるようです。そもそも日記は「自分しか読まない」ことが前提なので、あまり整理しないまま書いてしまうことがよくあるというのがその理由。

しかしツイッター、ブログ、フェイスブックなどのSNSは、「人が読む」ことを前提としたツール。そのため「読んだ人にわかってもらおう」という意識が働き、考えが整理されるようになるというわけです。

著者も管理者になってからは、部下に対してアウトプットの機会を強制的に与えるように心がけていたのだといいます。

なかでも大切にしていたのが、「書く機会」。

著者自身が、書くことで自分の頭のなかが整理され、仕事の質が高まることを実感していたからなのだそうです。

なるほど、話したり書いたりすることによって考えを整理すれば、いろいろな好影響が生まれそうです。(138ページより)

著者によれば、「知的生産術」は長時間労働から解放され、短時間で成果を出すためのヒント。そればかりか、楽しく仕事をするためのヒントでもあるのだそうです。

本書を参考にしながら知的生産性を高めていけば、少ない労力で大きな成果を上げられるようになるかもしれません。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2019年3月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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