金剛の塔 木下昌輝(まさき)著

レビュー

6
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金剛の塔

『金剛の塔』

著者
木下昌輝 [著]
出版社
徳間書店
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784198648473
発売日
2019/05/17
価格
1,870円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

金剛の塔 木下昌輝(まさき)著

[レビュアー] 塩野米松(作家)

◆四天王寺巡る時空を超えた物語

 大阪市天王寺区にある四天王寺(してんのうじ)は西暦五九三年の創建以来、七回の焼失や倒壊を経て現在八代目にあたる。今の建物は大阪大空襲で焼けたものを昭和三十八(一九六三)年に鉄筋コンクリートで再建したものだが、伽藍(がらん)は中門、五重塔、金堂、講堂と直線に並び、創建当時のまま。法隆寺が五重塔と金堂が左右に並ぶ伽藍であるのと大きく違っている。

 物語は、この四天王寺の幾度にもわたる再建の場が舞台となる。平安時代、織田信長の時代、大坂冬の陣の後、落雷で焼失した享和元(一八〇一)年、大きくさかのぼり、聖徳太子の要請に応えて百済(くだら)から送られてきた三人の宮大工達(たち)が日本の風土に合わせた塔造りに挑む話と、時空を超えて展開していく。

 四天王寺を築き、代々技を継ぎ、再建に力を注いできたのは、金剛組(こんごうぐみ)という千四百年を超えて続いてきた宮大工の集団。物語のなかでは「魂剛組(こんごうぐみ)」と名を変えてあるが、実在する組織である。創立者は百済から渡来して日本の大工達に堂塔造りの技を教えた造寺工の一人、金剛重光(しげみつ)。

 この魂剛組がストーリーの縦糸。焼失のたびに再建にあたった正大工(しょうだいく)や副棟梁(ふくとうりょう)の権大工(ごんだいく)の葛藤、跡継ぎをめぐる争い。崇仏(すうぶつ)派と廃仏派の権力争い、寺宝を狙う悪党の集団、魂剛組の失脚を狙う輩(やから)、大工達の技の競い合いなど、憎しみや欲、権力争いなどの人間模様が横糸となる。

 そして蘇我馬子(そがのうまこ)、物部守屋(もののべのもりや)、善信尼(ぜんしんに)、司馬達等(しばたつと)など歴史上の人物から、立木の中の腐れや性質を見抜く男、古紙買いの老人、百済から渡ってきた黒猫の末裔(まつえい)まで奇想天外の登場者達が物語を動かす。

 縦横無尽な展開だが、道具の話、材の扱い、心柱(しんばしら)の継ぎ方、長い軒の建物を造る仕組み、五重塔の構造、決して地震では倒れたことがないという柔構造の謎など、興味深い話が織り込んである。

 異空間をつなぐ鍵は聖徳太子と東京スカイツリーのストラップ。なぜスカイツリーが出てくるのかは最終章に。著者は建築学科卒でハウスメーカー勤務の経験を持つ。納得。

(徳間書店・1836円)

1974年生まれ。作家。著書『宇喜多の捨て嫁』『天下一の軽口男』など。

◆もう1冊 

西岡常一・小原二郎著『法隆寺を支えた木(改版)』(NHKブックス)

中日新聞 東京新聞
2019年7月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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