「それはもう、タモリさんの領域ですよね」ハライチ岩井を前に佐久間Pと能町みね子がその面白さを徹底解剖

対談・鼎談

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僕の人生には事件が起きない

『僕の人生には事件が起きない』

著者
岩井 勇気 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103528814
発売日
2019/09/26
価格
1,485円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【『僕の人生には事件が起きない』刊行記念特集】岩井勇気×佐久間宣行×能町みね子/なんでもないことを書いてみたら

[文] 新潮社

芸人界の「さくらももこ」!?


能町みね子さん

岩井 ところで、どうしたらこの本は売れるんですかね。

佐久間 別ジャンルの人がお墨付きを与えるか、そのジャンルの中で大きく支持されている人がお墨付きを与えると、芸人の遊びだとは思われなくなるよね。

能町 ハライチのことを実はめちゃくちゃ褒めている超大御所とかいないんですか。芸能人じゃない人で。

岩井 最高で能町さんです。

能町 本当ですか。私より上が絶対いますよ。

佐久間 例えば、これを売り出すのに、ネットに一編だけ無料で出していいって言われたらどれを出します? 反響があるのは同級生に怒っている話かもしれないけど、それはこのエッセイの本質ではないじゃないですか。

能町 あんかけラーメンの汁とか棚とかいきたいですよね。

佐久間 本当はそっちのほうが面白いから選びたいんだけど、世の中に響くのは同級生のほうかもしれない。

能町 でも、実際はそういうテイストじゃないって示すのがまた難しいですね。

岩井 俺が読んでほしいのも違うけど。

能町 ちょっとした事件をたくさん書いていくっていうのは、私もあんまりやったことないですね。

佐久間 芸人でもあんまりいないよね。芸人は自意識との葛藤というか、自分と社会との折り合いをエッセイにしていく人が多い。でも、岩井はそこが全くなくて、価値観の出来上がったところから面白がって書いている感じがする。ストレスなく、世の中に出ているのが本当の自分だから。

岩井 確かにそうですね。だからエッセイもラジオも、仕事の裏話みたいなのはしない。

能町 それはもうちょっといったらタモリさんの域ですよね。タモリさんがエッセイを仮に書いたとして、実はこんなことを考えていたって絶対出さないですよ。

岩井 エッセイを書いていった最高形って何だと思いますか。

佐久間 さくらももこさんの『もものかんづめ』とか?

能町 作品としての最高峰ですね。岩井さんも世の中に何かを言いたいとかではない、マンガのように読めるタイプのエッセイの中では相当いいと思います。

佐久間 もっと欲張っちゃいますよね。特に処女作だったら。

能町 気合入っちゃいます。小説とか、もっと社会に訴えかけたいエッセイとかは、読んで何かを得たいとか、栄養にしたいときに読むじゃないですか。でも、さくらももこさんのエッセイって、暇だから読んで、ちょっといい気分になったな、で、忘れちゃった、みたいな感じ。その域って書けないんですよ。

岩井 でも、いよいよ売れないんじゃないですか。

能町 『もものかんづめ』は200万部超えてますよ、確か。

岩井 じゃ、さくらももこ、追います。

一同 芸人界のさくらももこ(笑)。

 ※【『僕の人生には事件が起きない』刊行記念特集】なんでもないことを書いてみたら――岩井勇気×佐久間宣行×能町みね子 「波」2019年10月号より

新潮社 波
2019年10月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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