ZOOMで100人規模の瞑想も! ヤフーやトヨタが導入する不安に打ち勝つ新OS「マインドフルネス」とは?

インタビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ZOOMで100人規模の瞑想も! ヤフーやトヨタが導入する不安に打ち勝つ新OS「マインドフルネス」とは?

[文] かんき出版


荻野淳也さん

現在では、人材育成・リーダーシップ・組織開発の基盤づくりとして、国内外の多くの企業に採り入れられているマインドフルネス。そんなマインドフルネスをベースとした人材開発プログラムを、ヤフー株式会社をはじめとする数々の日本企業に導入してきたのが『マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる―脳科学×導入企業のデータが証明!』を上梓した荻野淳也さんです。本書が生まれたきっかけや、不安な要素が多いこの時代に有効なマインドフルネスな考え方などを伺いました。

※本インタビューは、新型コロナウイルスの影響を鑑みて、オンライン会議システムのZOOMにて行いました。

 ***

――本書は、マインドフルネスを導入した日本企業のインタビューを中心に構成された、非常に具体的な一冊ですが、どのようなきっかけで制作に至ったのですか?

私たちは、2013年に一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)という組織を設立しました。当初より、特にビジネス領域でのマインドフルネス展開を意図していましたが、当時は「マインドフルネス」という言葉自体も日本にはあまり浸透していませんでしたから、啓蒙活動からはじめるといった状況でした。
それから7年ほど経った現在では、日本企業の中でいち早くマインドフルネスに基づくトレーニングの導入に踏み切ったヤフー株式会社を皮切りに、続々と日本を代表する先端企業から中小企業までマインドフルネスに基づいた研修を導入するようになりました。MiLIも、ヤフーやトヨタをはじめ、150社以上の支援させていただいています。
こうした活動を通して、たくさんの実績、実例が蓄積してきましたので、これらの事例を通して、マインドフルネスというものがどのようにリーダーシップや組織作りにつながるのか、導入することで実際どのように組織やリーダーが変わっていくのか、導入するにあたって具体的にどのように進めていけばいいのか、といった点を事例ベースで紹介したいなと思い、本書を作ることにしました。
たぶん、日本で初めてのマインドフルネスの企業事例の本ではないかと思います。

――日本では類書のない一冊ですね。世界的には実に多くの企業やダボス会議でも正式に採用されているほか、国家レベルでマインドフルネスに取り組む国も現れるなど広く認知され活用されているマインドフルネスですが、改めてご説明いただくと、どのようなものなのでしょうか?

マインドフルネスというのは、「今ここ」に注意を向けている“状態”を指します。マインドフルネス=瞑想や癒しのプログラムというように捉えていたり、怪しい自己啓発というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、そうではなく、過去や未来へ向いている意識を現在の自分に戻した状態のことです。
こうしたマインドフルネスの状態になるためのひとつの手段として、瞑想(マインドフルメディテーション)も活用します。たとえば、呼吸に集中し、息を吸う、吐く、そのときのお腹の動きといった今の自身の状態や五感で感じる感覚など、現実をあるがままに観察することで、「明日の会議どうしよう」「あんなこと言わなきゃよかった」といった雑念を減らしていく。もし雑念が浮かんできたときには、評価・判断を手放して「ああ、自分は今こう考えているな」とありのままを認識するトレーニングをします。
このようにマインドフルネスになると、結果として、心身ともにストレスが軽減されていくといわれています。脳科学的には、特に「注意力の向上」「感情の制御」「自己認識力の向上」の3つを司る脳の領域が変化する、といったことが認められています。

――本書の中では、そういったエビデンスも豊富に紹介されていますが、特に伝えたい部分や読んでほしい章などはありますか?

実は、私の思いとしては、「おわりに」を読み、それから1章、2章、3章、4章と読み進めていただけるといいかなと。というのも、組織やリーダーが良くなることももちろんなのですが、大切なのはその先、つまり、マインドフルネスが日本の社会や人々の“OS”になり、多くの方の心豊かな幸せな生活のベースになることを目指し活動しています。
今の私たちは、変化が非常に激しくて答えのない「VUCA(ヴカ)ワールド」「VUCA時代」と呼ばれる世界で暮らしています。まさに、新型コロナウイルスが蔓延する今の状況がそうです。もう本当に先が読めない未知の状況になっていくと、その脅威に備えるような身体反応、つまりストレス反応などが出てくる。その状態でい続けると、免疫力が下がったり、感情的になったり、衝動的に反応したり、鬱になったりしてしまうわけです。
もちろん、VUCA時代でなくても、誰もがいいときもあれば悪いときもある。人生においてアップダウンは避けられない。だからこそ、まず自分自身が自分自身の人生を、そしてこの外部環境を乗りこなすために、マインドフルネスを一人ひとりのOSであったり社会全体のOSにしていこうと。それが、もっとも伝えたいことですね。

――マインドフルネスな状態になることで、新型コロナウイルスへの恐れといったものも手放すことができるのでしょうか?

マインドフルネスという状態には、評価、判断、批評・批判を手放すとか、保留するということも含まれています。不安や恐れというものは、今の状況を考えれば考えるほど出てきますが、きちんと適切な準備をしておけば、それ以上の思考や不安などは必要がないですよね。
ですので、マインドフルネスな状態で心をフラットにしておきつつ、自分の中の不安や恐れといった感情にもきちんと気づき続け、認めることが大事です。本当は感じているのに、それを抑圧したり避けたり、否定したりしてしまうと、そのストレスはどんどん身体感覚として蓄積されていってしまうので、ないものにするのではなく“気づき続ける”。私たちは気づかないものはマネジメントすることができないわけですから。
たとえば、いつまでたっても体重計に乗るのが怖くて避けていると、どの程度のダイエットをするべきなのか具体的なアクションが見えてきませんよね。恐れや不安も同じです。

――なるほど、不安をなくすのではなく「そう感じている自分」に気づくことが大切なのですね。では、本書を作るにあたって苦労された点はありますか?

そうですね、非常にいいインタビューがたくさん聞けたので、どれを掲載するべきか、吟味に困った点でしょうか。ほかにももっとインタビューしたい人もいるし、それだけでもう一冊書けるのではないかという事例もありました。とはいえ、一つの会社の事例を立体的にご理解いただくために、ヤフー株式会社の事例をひとつの章でじっくり解説しているところがひとつのポイントかなと思います。


上記にある「プレゼンティーズム」とはWHO(世界保健機関)が測定している健康と労働パフォーマンスに関する指標。具体的には「出社していながらも心身の不調などが原因で従業員のパフォーマンスが低下している状態」のこと

――ヤフー株式会社では千人規模での導入を実現していますが、このような大きな単位でも小さくはじめることでできるのですね。

はい。このソリューションは、「周囲を変えるより、まず自分の内面を変える」というインサイド・アウトという流れが大事だと思っています。つまり、まず自分事としてやってみたい人がやってみる。その存在をインターナル・チャンピオンと呼んだりもしますが、経営者もしくは人事責任者、担当者がまずやってみて「これはいい!」と実感してからインターナル・チャンピオンとなり導入を進めていく。その輪が広がっていくと千人規模にもなりますし、ヨーロッパのSAP社などはたった1人のマネージャーからはじまり、今は何万人もが受けるグローバルトレーニングになっています。

――そうなのですね。では最後に、荻野先生のオススメの本を教えてください。

では『禅マインド ビギナーズ・マインド』を挙げましょう。鈴木俊隆氏というアメリカに禅を広めた僧侶が書いた禅の本で、かのスティーブ・ジョブズの愛読書と言われている一冊です。
マインドフルネスのひとつのコツというか態度として、日本語で言う「初心」が大事なんですね。たとえば、私たちが初めての国に海外旅行に行ったときには、お店の看板や街の匂いなど色々なものが五感を伴って新鮮に感じますよね。それが、まさに「今ここ」の状態です。それくらいの解像度をもって常に「今ここ」にいられることがマインドフルネスの理想であり、そういったことが鈴木老師によって書かれています。
実は、私がマインドフルネスに至ったきっかけが、アップルという会社が好きであったことも関係しているんです。なぜジョブズがアップル社やさまざまな新しいプロダクトを作ることができたのかなど、ジョブズの経営のヒントを探究していた時期があって、そうするとやはり禅にたどり着く。
たぶんこの本がなければ、アップルは生まれていなかったでしょうし、そういったヒントがたくさん詰まった本ですね。たぶん、私たちはアップルのプロダクトを通して禅マインド、ビギナーズ・マインドに触れているのだと理解しています。同じように、“マインドフルネス”というものが自然とプロダクトや社会、人々のOSとなるということが私のひとつの理想ですね。

――昨今の状況を受けて、荻野さんは3月初旬より、無料で誰でも参加できる「朝のマインドフルネス」という瞑想の会を開催されていますね。

はい、今のこのような時期、このような社会だからこそ、私たちに何ができるのかを考えて、オンライン会議システムのZOOMで月曜~金曜の6:15~6:45に行っています。朝一で自分の呼吸と体と心を整えていい状態をキープしたまま日常生活を過ごせば、不安や恐れなどが湧いてきても、そこに気づいてすぐ自分自身に戻ることができると思うんですね。現在の参加人数は100人を超えていますが、いずれ1000人くらいでできればいいですね。興味のある方はぜひご参加ください。


4月9日に行った「朝のマインドフルネス」には122人が参加した

――私もぜひ参加させていただきます。本日はありがとうございました。

かんき出版
2020年4月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

かんき出版

  • このエントリーをはてなブックマークに追加