『男』
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【気になる!】文庫 『男』
[レビュアー] 産経新聞社
文豪・幸田露伴の娘で随筆家、小説家の著者の「男」をテーマにした随筆選。それぞれの仕事に精励する男たちをルポした昭和34年の雑誌「婦人公論」連載11編を中心に収録している。
同連載ではサケ漁、製鉄所、森林伐採、橋脚工事、救急医療、少年院などハードな現場に出かけ、話を聞き、自らも体感し、「男」に迫る。黙ってよく働く男の姿に「だいじにしなければなあ」、回を重ねるごとに「いよいよ惚(ほ)れっぽくなったか」の心情も。その筆致は、たった一字のタイトル同様、潔く、粋だ。
今年、没後30年。巻末の年譜や著書目録にも改めて見入った。(幸田文著、講談社文芸文庫・1500円+税)