幕末期の漂流民といえば、ジョン万次郎やジョセフ彦がまず浮かぶ。米国で先進知識を身につけ、帰国後は華々しい活躍を見せた。
同じ時代に音吉という漂流民がいたことは、あまり知られていない。だが、幕末外交史の舞台裏には常に彼の姿があった。彼自身、帰国を果たせず世界を転々とするが、ペリー艦隊から同胞を脱走させたり、福沢諭吉に海外情勢を教示したりと、開国に揺れる祖国とかかわり続けた。
著者は、資料を丁寧に掘り起こし、音吉こそ「日本の知られざる救世主」と位置づける。読み応えのある音吉研究の書だ。(新葉館出版・2600円+税)
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2020年8月23日 掲載
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