お金儲けは考えない。ビジネスパーソンがSNSを利用する際に心がけたいこと

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自分の名前で仕事がひろがる「普通」の人のためのSNSの教科書

『自分の名前で仕事がひろがる「普通」の人のためのSNSの教科書』

著者
徳力基彦 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784023318816
発売日
2020/08/07
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

お金儲けは考えない。ビジネスパーソンがSNSを利用する際に心がけたいこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

自分の名前で仕事がひろがる 「普通」の人のためのSNSの教科書』(徳力基彦 著、朝日新聞出版)の著者によれば、日本ではSNSやブログを実名で利用する人の割合が海外と比較して圧倒的に少ないのだそうです。

しかし、あえて「SNSは仕事の役に立つ」「組織に属するビジネスパーソンこそ発信しないともったいない」と言いたいのだとか。

なぜならSNSやブログによる発信は、ビジネスパーソンととても相性がいいから。ビジネスに役立ち、キャリアアップにつなげることもできるコミュニケーションツールだというのです。そこで本書では、SNS発信がビジネスパーソンの仕事に役立つ理由や、実際に役立てるための方法を紹介しているわけです。

ただしそれは、広告収入でお金を稼いだり、インフルエンサーのようにネット上で目立ったりしようということではないようです。あくまで目的は、組織に所属しながら発信をして、それをキャリアアップにつなげること。

ビジネスパーソンにとっての発信のメリットは、その「蓄積効果」にあります。発信の一つひとつの効果は小さくても、それらは蓄積され、可視化されていく。継続的に蓄積された情報は、発信者への信頼感を醸成します。この蓄積効果はネット上だけにとどまりません。発信者の評価としてリアルに反映されていくのです。(「Prologue ネットとリアルを分けない発信がビジネスを制す」より)

また、こちらの情報を求める人間が向こうからやってきてくれる「プル(pull)のコミュニケーション」が生まれるというメリットもあるのだとか。

話しかけたり電話をかけたりする「プッシュ(push)のコミュニケーション」の場合は、発信者側の都合で情報を押しつけてしまう可能性があるもの。しかしSNSやブログによる発信の場合は「プルのコミュニケーション」なので、発信を続けていると、向こうが好きなタイミングで情報をとりにきてくれるということです。

こうした考え方を念頭に置いたうえで、きょうはChapter.1 「SNS発信で『わらしべ長者』になる 『ハプニング』を生む『プルのコミュニケーション』」に焦点を当て、基本的な3つの考え方をご紹介したいと思います。

障壁となる「思い込み」

SNSやブログをビジネスに活用する際の重要なポイントとして、著者はまず「ネットとリアルを分けて考えない」ことの重要性を強調しています。

これまで、ネットをバーチャルなものだととらえてきた人は少なくないはず。そのためSNS発信をする際にも匿名やハンドルネームで登録し、リアルの自分とは別の人格で発信することを当然と考えていた部分は少なからずあったということです。しかしそれは、SNS発信をビジネスにふさわしいツールではないと誤解させる原因のひとつ。

実名で発信すれば、二つの人格は同じになります。ネットはリアルと地続きとなり、そこで得たものはリアルにも反映されていく。うまく発信できれば、ネット上での評価によってリアルのプレゼンスまで上がるのです。(40ページより)

そこで、まずはこうした障壁を外すことからはじめるべきだという考え方です。(40ページより)

「メディア」だと思わない

著者によれば、真面目な人やメディア系の仕事をしている人ほど、個人のSNS発信をニュースメディアの発信と同じようにとらえる傾向があるのだそうです。しかし、ビジネスパーソンのSNS発信はあくまでコミュニケーションの手段であり、リアルのおしゃべりと同じ。ニューサイトや有名人ブログのような「メディア」ではないということです。

それに、ブログやSNSを「メディア」と考えてしまうと、発信のハードルは一気に上がってしまうことになります。「誰も知らない話を書こう」というような意識が大きくなっていき、気軽に発信できなくなるわけです。

SNS発信の初期は、野球と似ています。素振りをしないと、体はどんどん固くなってしまいます。素振りが満足にできないのに、いきなりホームランを打とうとしても無理です。日々、気楽に素振りができるよう、発信のハードルは下げましょう。(43ページより)

たとえば友人と話すとき、ちょっとカッコつけたくなることはあったとしても、「知らない話を提供しなければ」「ここで鋭い意見を言わなければ」などというようなことは思わないもの。ブログやSNSで発信するときも、同じような意識でいいということです。

もちろん、読んだ人を傷つけたり、悪い気分にさせないように配慮することは大切。けれど、それはネットでもリアルでも同じ。社会人として常識的な感覚を持っている人であれば、充分にわかることであるはず。

人がまだ知らない話や、誰かの心を揺さぶるような印象的な話を発信しようと考えるのは、あくまで「メディア」の視点。したがって、肩の力を抜くことが重要なのでしょう。(42ページより)

お金儲けを考えない

「うまくブログを書けば、楽にお金儲けができる」と思い込んでいる人がいますし、たしかにブログで生計を立てている人も存在します。しかし、ビジネスパーソンがSNS発信をするときには、まず「稼ぐ」ことから離れるべきだと著者は主張しています。

いうまでもなく、究極の目的は「仕事に役立ること」だから。その原点に立ち返れば、お金儲けを目的にしてしまうと組織内で浮いた存在になってしまうわけです。「副業をしているのか」「転職するために発信しているんじゃないか」というように勘繰られ、上司や人事から目をつけられ、発信を仕事に生かすどころではなくなってしまう可能性も考えられるのです。

SNS発信は、あくまで「リアルの仕事の延長線上にあるものととらえてください。リアルの仕事にSNS発信を組み合わせることでいっそう成果が上がり、その結果、リアルの年収が上がるかもしれない。そのほうがよっぽど、お金儲けとしてはスジがいいと思いませんか?(44ページより)

億単位のお金を稼いでいるYouTuberの話を聞いたりすると心は揺らぎますが、動画とくらべて文字による発信は広告の単価が低く、お金儲けにつなげるのは大変。しかもYouTuberにせよブロガーにせよ、発信を始めたばかりのころは儲からないものでもあります。

彼らは発信そのものを楽しんだ結果、蓄積が増え、いつの間にかお金を稼げるようになっていたにすぎないということ。だからこそ発信そのものを楽しむことが先決で、そのためにはお金儲けから離れるべき。SNS発信によってリアルの世界を広げていけば、そのほうが結果としてお金儲けにつながり、仕事にいい影響を与えるわけです。(44ページより)

こうした基本的な考え方を軸に、以後はSNSで発信するための方法がわかりやすく解説されています。ビジネスの幅を広げるためにも、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史
Source: 朝日新聞出版

メディアジーン lifehacker
2020年9月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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