『新しい仕事術』
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もう戻らない。新しい時代に攻める広がる仕事術
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
新型コロナについて、「いつ終息するのか」と考えることは、「それが終わって、以前のような生活に戻ること」をイメージした状態。しかし、前の生活に戻ることはなく、すでに新しい時代が始まっている。
『コロナ時代をチャンスに変える 新しい仕事術』(中谷彰宏 著、リベラル社)の著者は、そう主張しています。
重要なのは、新たな時代が始まったことに気づけるかどうかであり、社会の意識革命を待っていたのでは間に合わないというのです。
自分の意識が変わることによって、社会の見え方が変わってきます。 これが大きいのです。
社会を変えようということではありません。自分の意識を変えれば、社会の変わってきたところに気づきます。
「あの会社は、もうこんな取り組みをしている」と思えるのです。 自分の意識が変わっていないと、世の中の遅れているところばかり目につきます。
「みんなは、まだこうしている」としか思えなくなるのです。 (「まえがき』」より)
世の中には、「遅れている部分」と「進んでいる部分」があるもの。したがって、進んでいる部分から置いてきぼりにならないように、がんばらなくてはならないという考え方。
もとに戻ることを期待すべきではない時代だからこそ、遅れている人を見るのではなく、進んでいる人を見ておくことが重要だということ。
そのような観点から「新たな生き方」を提示した本書のなかから、第5章「仕事術」に焦点を当ててみたいと思います。
新しい仕事との出会いが増えた
自粛期間に入って、なくなった仕事も少なくありません。しかし、その一方、新しく生まれた仕事もたくさんあると著者は指摘しています。
AIが出てきたときに、「AIに仕事が奪われる」という意見をよく聞きました。たしかに、AIの出現によってなくなってしまう仕事もあるでしょう。
しかし「AIに仕事が奪われる」と騒いでいる人は、同じように「生まれる仕事」もあるということを忘れているというのです。
いいかえれば、自分の仕事を奪われることばかりを考え、時代に合わせた仕事をつくり出そうとは考えていないということなのでしょう。
終戦の時に、それまで軍国主義だった時代に流行っていた仕事はなくなりました。そのかわり、民主主義の時代に新しく必要になる仕事がたくさんできました。
明治維新や太平洋戦争の後には、たくさんの企業が生まれました。 どさくさの中から生まれた企業が、現在も日本を支えているのです。
電話機が生まれた時は、「対面の必要性がなくなって、営業マンの仕事がなくなる」と言われました。 実際は、電話でアポをとることで対面数は増えたのです。
リモートが出てきても、人との出会いがなくなることはありません。 電話の例でもわかるように、リモートが増えることによって、遠くの人とも対面で話す機会が増えます。(164ページより)
つまり著者が強調しているのは、なくなる仕事をなくさないようにするよりも、新しい仕事をつくることを考えたほうがいいという考え方です。(163ページより)
自発と受け身の違い
著者によれば、自発とは「このままじゃおもしろくない」という発想。対する受け身とは、「このままキープしたい」という考え方。
どちらを選ぶかはその人の自由ですが、しかし同じことをするなら、常に攻めていたほうがいいと著者はいいます。
守りと攻めは人間の生き方のベースにあることです。
「このままがいい」「元の状態に戻りたい」というのが受け身です。
「戻らなくていい」と思うのが自発です。
無人島に流れ着いた時に、「救出されたい」と思うのが受け身です。 「ここで一生暮らしたい」と思うのが自発なのです。 (171ページより)
守るより、攻めることが大切だというわけです。(170ページより)
行動とは、したいことを選ぶこと
行動には、
① 嫌いなことを避けるために動く
② したいことをするために動く
という2つの行動方針があります。
(172ページより)
いまの仕事が嫌だから転職するというのは、「嫌いなことを避けるため」に動くということ。
一方、他になにかしたいことがあって転職するのは、「したいことをするため」に動くということ。
すべての行動の方針は、この2つに分けられるというのです。
今していることイヤだから辞める人は、次へ行ってもうまくいきません。
イヤなものから逃げ回っているだけで、好きなものにたどり着けないのです。これが受け身です。
自発は「あれをしたいから、そこへ行く」ということです。 (173ページより)
つまり、嫌いなことを避ける生き方から、したいことをする生き方にシフトすることが大切だというのです。(172ページより)
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著者の主張はいたってシンプルですが、だからこそ本質が表れているようにも思えます。マイナスをプラスに転化させるため、参考にしてみるのもいいかもしれません。
Source: リベラル社
Photo: 印南敦史