<東北の本棚>震災を背景に友情描く
[レビュアー] 河北新報
宮城県内の、とある私立高校のバレーボール部と演劇部の女子高校生が繰り広げる青春ドラマだ。
2011年の東日本大震災を背景に、大人の階段を上る思春期の友情を描いた。2人のような高校生たちが身近な地域で当時、目の前の生活を精いっぱい過ごしていた姿を想像させる。
バレー部に所属する高校2年の香と、演劇部員の智子は幼なじみ。中学で少し疎遠になっていたが、ある日、けがで部活ができなくなった香を、智子が演劇部員向けの観劇会に誘ったことをきっかけに交友が再開する。
バレーの県大会が終わった香は智子に頼まれ、少ない演劇部員をカバーして、ちょい役で演劇の県大会に出演した。上位2校が東北大会に進める県大会。脚本を担当する智子は燃えるが、結果は一歩届かなかった。
そんな1年が終わる3月、授業中の校舎を震災が襲った。岩沼市の海岸部にある智子の家は-。
高校生の言葉遣いと心理描写が、淡い心持ちにさせる。香が対戦する女子バレー強豪校の設定や、仙台弁のせりふなどもご当地色豊かで、思わず頬が緩む。
著者は仙台市在住。著書に児童ファンタジー「空のフェイス-テンの物語」。(会)
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