『花のなごり -奈良奉行・川路聖謨-』
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『花のなごり 奈良奉行・川路聖謨』出久根達郎著
[レビュアー] 産経新聞社
幕臣、川路聖謨(としあきら)の物語。軍艦で来航したロシアのプチャーチンを相手に択捉島以南を日本領として確保したのも川路の功績である。
黒船が出現する直前の5年間、彼は奈良奉行を奉職し善政と人柄で士民から慕われた。本書は川路の奈良時代の前半期を小説化した前作『桜奉行』に続く作品だ。
大名家のお家騒動の真相解明に当たった若い日々の回顧を交えつつ、奈良の町の事件や奉行所の業務が描かれる。彼は日記を残しており、そこに登場する家族や家臣が小説の中で会話し、明るく、ときにしんみりと物語が進む。川路の生涯が、咲いて散り敷く桜花と重なる。(養徳社・2750円)