『三人の悪党』
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面白い作家は最初から面白く今読んでも面白い
[レビュアー] 北上次郎(文芸評論家)
書評子4人がテーマに沿った名著を紹介
今回のテーマは「親分」です
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浅田次郎という作家の存在を最初に教えてくれたのは大沢在昌だった。
日本推理作家協会の会合の雑談で、『とられてたまるか!』読んでる? 面白いよ、と大沢が言った。浅田次郎の第1著作である極道エッセイをいち早く読み、その面白さを評価して教えてくれたのである。1991年のことだ。梅原克文『二重螺旋の悪魔』の面白さを、まだ角川ホラー文庫に入る前、ソノラマノベルスの段階で教えてくれたのも大沢在昌だった。大沢は大の読書家で、しかも読み巧者なのである。
書評家が作家に「新時代の才能」を教えてもらうというのは情けないが、事実だから仕方がない。
浅田次郎は『とられてたまるか!』の翌年(1992年)に、初の小説『きんぴか』を上梓し、1993年『プリズンホテル』、1994年『地下鉄(メトロ)に乗って』(吉川英治文学新人賞を受賞)と、あっという間にスター作家となっていくが、『とられてたまるか!』の段階でその才能を見抜いた大沢在昌の慧眼には感服せざるを得ない。
『きんぴか』は先に書いたように浅田次郎の初の小説である。敵対する組の親分を殺して13年服役した健太(通称ピスケン)、湾岸派兵に反対した元自衛隊員大河原、収賄事件の罪をかぶった元政治家秘書広橋。この三人が巨悪と戦う痛快小説だ。
その後、続編が書かれて三部作となっているが、現在読んでも面白いのはさすがと言っていい。