『鎌倉北条氏の女性たち 』今井雅晴著

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鎌倉北条氏の女性たち

『鎌倉北条氏の女性たち』

著者
今井雅晴 [著]
出版社
教育評論社
ISBN
9784866240619
発売日
2022/06/21
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

『鎌倉北条氏の女性たち 』今井雅晴著

[レビュアー] 三保谷浩輝

■武家社会を賢く生き抜く

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」がおもしろい。武家社会の権謀術数が渦巻き、愛憎、生死、さまざまな別れが壮絶に描かれる。あまりの展開に目をそむけたくもなるが、怖いもの見たさで釘付けになる。

一方、ドラマと同じ鎌倉時代が舞台で先の直木賞候補になった小説『女人入眼(にょにんじゅげん)』の著者、永井紗耶子さんは、この時代について「女性が強く主体的に動いていたことに魅力を感じていた」と話していた。

永井さんの一言もあり、手に取った本書は、源頼朝の妻・政子らの父で初代執権の時政を祖とする鎌倉北条氏に縁のある17人の女性の生涯を追っている。

尼将軍と呼ばれ、幕府の発展に尽力した政子。その妹で、頼朝の異母弟・阿野全成(ぜんじょう)と結婚した阿波局。頼朝の血を引き、政子に続き幕府権威の象徴と期待された竹御所。2代執権義時と比企氏出身の姫の前の娘で、天皇擁立にも関わった竹殿。3代執権泰時と離婚した後も息子の時氏に尽くすなど家の隆盛を支えた矢部尼(やべのあま)…。

17人それぞれのドラマチックな生涯を、歴史学者が落ち着いた筆致で紹介している。

例えば5代執権時頼の妻・葛西殿(かさいどの)は、父で幕府の指導者だった北条重時の教えを受け、夫の治世を安定させたほか中国貿易にも関わり、9人の執権の時代を経て85歳まで生きたという。

時頼の母・松下禅尼(ぜんに)は有力御家人の娘だが、時頼に質素倹約を教え込み、『徒然草』で絶賛された。逆に時政の妻・牧の方は後年、京都で生活し、藤原定家の日記『明月記』で行動が派手すぎると批判されたエピソードが盛り込まれている。

本書によれば、鎌倉時代の女性たちは「恋愛は自由」だが、「結婚は親の指示のもとに一家の利益になるように」。また、武士の社会で生き抜くための知恵を子供に教える役割を母親も担っていたため、自ら社会の動きを探り、対処する方法を学んだという。

そこから浮かび上がる「男性を押してまた引いて、力強く賢く動く女性たち」は確かに魅力的で、著者も「現代を将来に向けて推し進めていく力になるのではないか」としている。

大河ドラマを見るのが、さらに楽しみになってきた。(教育評論社・1760円)

評・三保谷浩輝 文化部

産経新聞
2022年9月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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