<書評>『西山太吉 最後の告白』西山太吉/佐高信 著

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西山太吉最後の告白

『西山太吉最後の告白』

著者
西山, 太吉, 1931-2023佐高, 信, 1945-
出版社
集英社
ISBN
9784087212457
価格
1,045円(税込)

書籍情報:openBD

<書評>『西山太吉 最後の告白』西山太吉/佐高信 著

[レビュアー] 内田誠(ジャーナリスト)

◆戦後政治史の矛盾を暴く

 本書出版から二カ月あまりたった二月末、西山太吉氏の死去が報じられた。タイトル通り、「最後の告白」となった本書は、政治記者・西山太吉氏の「最後の告白」のみならず、対米従属という、現代に続く戦後政治史の基本的な矛盾について視座を提供する証言集ともなっている。

 沖縄返還に際してアメリカが日本に支払うべき四百万ドルの補償金を日本が肩代わりしていたいわゆる「沖縄密約」をスクープしたことで知られる西山太吉氏。佐高氏は、西山氏が「国家のウソ」を暴いた唯一のジャーナリストであるにもかかわらず、そのことがいまだ正当に評価されていないとして、改めて顕彰することを本書の課題の第一に挙げている。氏のスクープは、時の権力によって「外務省機密漏洩(ろうえい)事件」と読み替えられ、「国家公務員法違反」にすり替えられた挙げ句、隠蔽(いんぺい)された。西山氏は逮捕され、裁判所は有罪判決を下した。

 また、西山氏が深く関わった自民党内のハト派的な潮流、「宏池会」の精神と思想を明らかにすることも本書の重要な課題とされている。ここで語られている「宏池会」はもはや一派閥の名称ではなく、自民党内のリベラルな「政治手法」を意味している。驚かされたのは、西山氏がいずれ、自民党から立候補しようとしていたと告白していることだ。当選後は「宏池会」の列に加わっていたはずの西山氏。そこまで入れ込んだ「宏池会」から現在、久しぶりに総理大臣が出ているのだが、政治手法としての「宏池会」は既に消滅してしまったかのような岸田政権のあり様には、裏切られた思いだっただろう。

 佐高氏は、三つ目の課題として、沖縄が抱えている「現代日本の矛盾」、西山氏が暴いた「密約」に象徴される矛盾について「西山の口から語ってもらいたい」という。「沖縄返還」は米軍による基地の自由使用と日本側の過大な財政負担という二つの密約による日本側の「主権の自己制限」であり、したがって沖縄は「実は返還されていない」との指摘には、改めて慄然(りつぜん)とせざるを得ない。

(集英社新書・1045円)

西山 1931年生まれ。元毎日新聞記者。

佐高 1945年生まれ。評論家。『佐高信評伝選』を刊行中。

◆もう1冊 

西山太吉著『記者と国家 西山太吉の遺言』(岩波書店)

中日新聞 東京新聞
2023年3月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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