「仕事の順番」を変えるだけ。質・スピード・効率があがる5つのステップ
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「仕事の質やスピードを高めたい」と考える人は多いのに、仕事のやり方について悩む人が一向に減らないのはなぜか?
それは「仕事の順番」を意識していないからだと主張するのは、『仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番』(田中耕比古 著、フォレスト出版)の著者。ここでいう仕事の順番とは、仕事を行うにあたり、どういう点に気をつけながら、どういう順序で物事を進めていけばいいのかという「基本の型」だそうです。
注目すべきポイントは、「仕事がデキる人には、独自のすごいノウハウがある」というのは幻想だと断言している点。仕事がデキる人、仕事が速い人をよく観察してみれば、彼らは特別なことをやっておらず、基本に忠実かつ着実に仕事をこなしているだけだということがわかるというのです。
彼らは、仕事の基本の型である「順番」をしっかりと押さえているのです。
「基本を疎かにしない」。これを実直に守っている人が、一番速く、一番確実に成果を出せます。(「はじめにーー『何をどの順番で進めるか』で成果は変わる」より)
正しい手順で考え、それに沿って仕事を進められるようになると、仕事のミスやトラブルが圧倒的に減るもの。無駄なやりなおしが少なくなるため、結果的に仕事の「質」と「スピード」が上がるというわけです。
そこで本書では、著者自身が若手コンサルタント時代に叩き込まれたノウハウを軸としながら、その後、20年近くかけて体系化してきたという「成果につながる仕事の順番」を明らかにしているのです。
ベースになっているのは「GRAPH」という5ステップの「仕事の順番」。そこできょうは第2章「仕事を進める基本の型『GRAPH』」に焦点を当ててみたいと思います。
仕事を推し進める5ステップ
仕事には、定められた手順があるもの。その手順に従って着実に実行していけば、失敗のリスクが下がるため、ひとつひとつの作業の中身について考える余裕を持つことができるわけです。
とはいえ、仕事の内容は業種や業態によって変わります。それどころか、プロジェクトや企画など、取り組む仕事それぞれが別もの。しかし、それらの違いを超えた“基本となる型”があるのも事実で、それこそが「GRAPH」だというのです。
ありとあらゆる仕事を、同じ手順に合わせてやろうとすると「いいからさっさと動けよ」「考えているうちにやったほうが早いだろ」「面倒くさいやつだな」などと言われてしまうかもしれません。
しかしながら、初めて取り組む仕事や、非常に複雑で定型的には進められないような仕事に取り組むときには、理想となる手順を意識し、型を守って進めることが、成功への近道となります。(46ページより)
だとすればその手順、つまり「仕事の順番」を知りたいところですが、それは次の5つのステップに分けられるそうです。
G:Goal/目的・目標を決める
R:Route/道筋・打ち手を考える
A:Agreement/すり合わせる
P:Progress/実行する・進捗を管理する
H:Harmonize/調和させる
(47ページより)
この順番を、それぞれの頭文字をとってGRAPHと呼んでいるわけです。それぞれについて簡単に確認してみましょう。(46ページより)
G: Goal(ゴール)
まずはゴール。つまり、自分たちが「どこに向かうのか?」を最初に決めることが大切だという考え方です。なにを依頼され、どんな成果(もの)が求められているのかを見極め、仕事のゴール(目的・目標)を定めるべきだということ。
また、組織からゴールが与えられている仕事であれば、それを確認しつつ、そのうえで「なにを成果とするか」を定義することも重要。(46ページより)
R: Route(ルート)
目的地に向かって、どういうふうに進んでいくのかを考えること。そうすれば、さまざまな選択肢があることに気づくでしょう。つまりはそのなかにおいて、「どの道順で進んでいくのか」を決めるわけです。これは、定めたゴールに到達するための打ち手を考えることでもあるそうです。(46ページより)
A: Agreement(アグリーメント)
取引先や上司、同部署のメンバー、他部署のメンバー、部下など、仕事にはさまざまな相手がいるもの。それらの相手と、目指すべき目的地や仕事の進め方、納期などについて確認し、擦り合わせて合意を得るプロセスがアグリーメント。
この時点で認識のズレを検知して解消しておかないと、あとから痛い目に遭う可能性もあるわけです。(46ページより)
P: Progress(プログレス)
お互いの認識が合ったら、次にすべきは「実行する・進捗を管理する」こと。実際に仕事に取りかかり、ちゃんと計画どおりに進んでいるか確認しながら作業を進めるプロセスです。このとき、「R:Route(ルート)」で定めたことが「道しるべ」の役割を果たすのだとか。(47ページより)
H: Harmonize(ハーモナイズ)
ハーモナイズは「調和する」という意味ですが、つまりここで目指すのは、「仕事の完了にあたり、すべての物事を調和させるということ。単なる作業終了・作業完了だけでなく、仕事内容を振り返り、適切なフィードバックを受け、改善点を洗い出すなど、次の仕事への準備も含まれるそうです。
大切なのは、求められていたものをしっかり相手に受け渡し、品質も含めて問題ないことを確認・合意すること。数値的なゴール設定に対しては、成果がどうだったのか、振り返り、改善点を明確にして次の仕事に生かせるようにしていくべきだといいます。(49ページより)
最初に定めた目的地、そこに至るための道筋、たどってきた進捗、最終的な作成物。それらすべてが相手の要望に対して充分なものだったかを確認し、仕事としての「全体調和」を図るべきだということ。以後の章では、これらについて詳細な解説が展開されていきます。
著者によれば、「何度、どの順番で、どう進めるか」を意識するだけで、仕事の効率や生産性は大きく変わるもの。仕事の生産性を向上したいのであれば、参考にしてみる価値は大いにありそうです。
Source: フォレスト出版