『〈猫〉の社会学』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『〈猫〉の社会学』遠藤薫著
[レビュアー] 産経新聞社
猫は「精霊である」と著者はいう。上下関係に敏感で飼い主への忠誠心あふれる犬とは違い、自由気ままにふるまう猫は、人間世界の秩序の外にいる存在だからだ。そんな猫を人々がどう評価するかは、社会のあり方を反映しているのではないか。社会学者が「猫の社会学」の可能性を探究する。
猫ブームが日本で初めて生じたのは江戸時代。招き猫や化け猫の物語が流行したが、その構造を分析すれば、社会的強者と弱者の分断の中、猫が社会的弱者への助力や強者への報復を担う超自然的規範の象徴だった図式が見えてくる。まじめな考察の中に交じる猫愛も面白い。(勁草書房・3520円)