会計知識は全ビジネスパーソンに役立つ。「決算書」を最速で読めるようになる秘訣は?

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決算書は、「ここ」しか読まない

『決算書は、「ここ」しか読まない』

著者
石川 和男 [著]
出版社
PHP研究所
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784569854106
発売日
2023/03/20
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

会計知識は全ビジネスパーソンに役立つ。「決算書」を最速で読めるようになる秘訣は?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「会計」と聞いて抵抗を感じる方は、決して少なくないはず。数字に苦手意識をお持ちの方であればなおさらかもしれません。しかし『決算書は、「ここ」しか読まない』(石川和男 著、PHP研究所)の著者は、こう主張するのです。

現代ほど、会計の知識があらゆるビジネスパーソンにとって必要とされる時代はない。

これは、簿記講師・税理士・民間企業の経理担当役員という3つの立場から、会社や企業の数字を長年見てきた私の持論です。(「はじめに」より)

経理部や財務部のみならず、どんな職種、どんな立場になったとしても、会計の知識は必要だというのです。なぜなら会計の知識は、ビジネスの構造を理解することに直結しているから。とはいえ会計・簿記担当者以外は、決算書のつくり方まで学ぶ必要はないのだとか。

経理担当者の方々が苦労して作成した会計帳簿の最終系こそが決算書です。つまり、決算書とは、会社経営の結果を数字で明らかにしたものなのです。

だから、経理担当者以外のあなたは、決算書を作る必要はなく、ただ読めればいいのです。(「はじめに」より)

さらに、会社組織や投資先、取引先の状況を知るうえで避けられないのが決算書の分析。ところが「どう分析したらいいのかわからない」「数字の羅列を見ただけで読む気が失せる」「読むことはできても、活かせない」と嘆くビジネスパーソンも多いようです。

そこで本書は、「これまで決算書を読むことに苦手意識を抱えてきた人でも、決算書を最短最速で読めるようになり、企業分析ができるようになるために」書かれているわけです。きょうは、決算書が読めるようになることのメリットがまとめられた第1章「決算書が最速で読めれば、仕事も人生も一変する」に焦点を当ててみたいと思います。

最速で読むなら、細かすぎる知識は邪魔

「木を見て森を見ず」という格言があります。ご存知のとおり、「1本1本の木に注意を奪われると、森全体が見えなくなる」ということ。つまり、「物事の細部に気を取られて全体を見失う」「些細なことにこだわりすぎて本質を見落とす」ことを意味するわけです。

経理担当者の場合は、当然ながら木も見なければならないでしょう。森である決算書をつくるためには、1本1本の木に相当する細かい項目を見て記録しなければならないのですから。

決算書の中心は「貸借対照表」「損益計算書」です。

貸借対照表は「資産」「負債」「純資産」から構成され、損益計算書は「収益」「費用」から構成されています。

これら5項目は、決算になって突然、姿を現わすわけではありません。決算日の1年前から、5項目それぞれを記録し最終的に記録した1年分の項目を、決算書に集合させます。

5項目は、現金、普通預金、建物、備品、借入金、資本金、売上、給料……など細目に分けて記録する必要があります。(14ページより)

そのため経理担当者は正しい決算書をつくるため、「現金はいくらあるのか」「受取手形の残高はいくら残っているか」「商品の代金や売上高、借金はいくら残っているか」など、1年間にわたって木を見続けなければならないわけです。

しかし経理担当者以外であればその必要はなく、森の概要だけサッと理解しておけばOK。

なお決算書には、法定福利費と福利厚生費、交際費と会議費など、似たような科目が多数出てきます。したがって、それらの違いにいちいち目を向けていると、なかなか先に進めないということになってしまいます。

そこで、たとえば「これらは『販売費および一般管理費』という同じ仲間で、収益を得るために必要な費用のグループ」と把握しておくだけでいいというのです。

もちろん、より深く科目を理解することは邪魔にはならないでしょう。しかし決算書を読むことが目的であるなら、「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」という“基本の5項目”のどのグループなのかを押さえるだけで大丈夫。そのため著者は、「決算書は、絞って読むもの」だと主張するのです。(14ページより)

なぜ決算書は必要か?――利害関係者の視点から

得意先、仕入先、取引先、国、地方公共団体、商工会議所、法人会、税務署、銀行ほか金融機関、協力会社、関連会社、親会社、子会社、債権者、債務者、投資家、株主、消費者、従業員、就活生などなど、企業の取引先はさまざま。そしてこれらの利害関係者は、決算書を読むことでさまざまな判断を行っています。

得意先、仕入先、取引先は、安心して取引ができるかを判断します。

銀行ほか金融機関は、お金を貸し付けられるか、無事に回収できるかを判断します。

投資家、株主は、株価動向が気になります。

税務署は税金が適正に計算されているか。

従業員は会社は存続するか、賞与はもらえるか。(26〜27ページより)

そして、これだけ多くの利害関係者がいる以上、統一した様式の決算書でなければ大変なことになります。

もしもA社、B社、C社の3社がそれぞれ好き勝手にそれぞれ異なるタイプの決算書をつくっていたとしたら、「どの会社が儲かっているのか」「どの会社の財政状態がいいのか」などがわかりづらいため、業者間の比較ができなくなります。

また、「D社は1年でこれだけ儲かり、E社は8か月でこれだけ儲かり、F社は3か月で、G社は5年で」というように期間がバラバラの決算書を見せられても、各社を比較することは不可能。

そのため、1年間という統一した期間を設けて報告するというルールがあるわけです。この期間が、「会計期間」と呼ばれるもの。

個人事業主(会社を設立せずに、個人で事業を営む人)は1月1日から12月31日の1年間です。

会社組織も同じ1年間ですが、期間は任意です。そのため4月1日〜3月31日、8月1日〜7月31日、個人と同じ1月1日〜12月31日など様々な会社があります。(28ページより)

会計期間が決まっていることで、「この1年間でどれだけ儲かったのか」「どれだけ財産や借金があるのか」などを、企業を取り巻く利害関係者に明らかにすることができるわけです。(26ページより)

決算書を難しくとらえず、興味を持って読んでみてほしいと著者はいいます。大変だと感じるところは読み飛ばし、自身の実情に合った箇所や興味を引かれた箇所を深掘りして読んでみるだけで、数字の意味がわかるようになり、知識が身につき、決算書を読むのが楽しくなるというのです。そうなるために、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: PHP研究所

メディアジーン lifehacker
2023年5月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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