メガバンクOBの田中圭史は64歳。55歳で転籍した関連会社での勤めもあと1年となったところで、大学のゼミ仲間が社長に就任。平凡、無風だった会社人生の歯車が狂い始める。
妻のミドリら家族や会社内外の人々が抱える厄介ごとが、圭史にも次々と降りかかる。病気や老後資金、会社を巡る問題など、「サラリーマン晩年の実相」を浮き彫りにする物語だ。
仕事だけの人生だった圭史にミドリが言った「仕事さえしていれば、なんでも許されると思っていたわね」の言葉に身が縮む。サラリーマン社会を熟知する著者の文庫書き下ろし。(光文社文庫・770円)
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2023年6月11日 掲載
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