『美ら海トワイライトゾーン』佐藤圭一/沖縄美ら海水族館深海展示チーム著(産業編集センター)

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美ら海トワイライトゾーン 知られざる深海生物のワンダーランド

『美ら海トワイライトゾーン 知られざる深海生物のワンダーランド』

著者
佐藤 圭一 [著]/沖縄美ら海水族館深海展示チーム [著]
出版社
産業編集センター
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784863113664
発売日
2023/05/23
価格
3,080円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『美ら海トワイライトゾーン』佐藤圭一/沖縄美ら海水族館深海展示チーム著(産業編集センター)

 沖縄美(ちゅ)ら海水族館ですぐ連想されるのはジンベエザメやマンタだが、登場するのは地味な存在の深海生物。どれだけ色彩鮮やかで多彩で、時に妙ちくりんかがよくわかる。

 抜群の透明感の沖縄の海は、実は生き物のエサは乏しい。大陸の陸水からもたらされる栄養分が黒潮で遮断されるなどし、「砂漠みたいな場所」(佐藤圭一・水族館統括)だからだ。おかげで、限られたエサごとに専門に食べる生物が分化した。貧栄養が多様化を促したのだ。

 本著では、同館発見のチュラウミカワリギンチャクなどの生物を500メートル以深まで水深ごとに掲載。オニキホウボウなど同館でのみ生態観察できる生物には、腹が扇子状に下に広がるウチワフグのように研究のため米スミソニアン博物館の研究者が飛んで来たほど希少な存在も。

 大半の生物が、小型無人潜水艇で捕まえたか狙って釣り上げたのも驚きだが、地上に順応させ、水槽で飼えるようにしたノウハウにもうならされる。読むほどに見たくなる。同館への吸引力はマンタ以上になるはず。(辻)

読売新聞
2023年7月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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