『エレクトリック』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『エレクトリック』千葉雅也著
[レビュアー] 産経新聞社
ウィンドウズ95が発売された1995(平成7)年の宇都宮市。高校2年生である主人公の達也はまだなじみの薄かったインターネットに接続し、ゲイサイトにたどり着く。同性愛を自覚していた達也は、不思議な静けさのあるネット空間に浸りながら、この世界の広さを思う。一方、地元密着の広告業を営んできた達也の父親は、ネットの普及によって従来のビジネス手法の転換を迫られていく…。
時代の変わり目を生きる父と子の心情を見つめた一種の青春小説。人々の間に不安と興奮が交錯していたインターネット黎明期(れいめいき)の空気を巧みに描く。第169回芥川賞候補作。(新潮社・1650円)