【児童書】『列車にのった阿修羅さん』いどきえり著、マスダケイコ画、深澤吉隆監修

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列車にのった阿修羅さん

『列車にのった阿修羅さん』

著者
いどき えり [著]/マスダケイコ [イラスト]/深澤吉隆 [監修]
出版社
くもん出版
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784774334264
発売日
2023/06/20
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【児童書】『列車にのった阿修羅さん』いどきえり著、マスダケイコ画、深澤吉隆監修

[レビュアー] 産経新聞社

■疎開した仏像

先の大戦末期、国宝の阿修羅像など仏像約20体が奈良市内の空襲後、国の通達を受けて疎開した。預け先は山間部の吉野にある民家の土蔵。この家の長男、総一郎は国民学校(今の小学校)の6年生。父は出征し、祖父母や母と仏像を守る。

戦闘機に憧れていた総一郎だが、日本が戦争に負けると、苦しい気持ちを阿修羅像にぶつける。やがて「戦いの神さま」と聞いていた阿修羅像が武器を持っていないことに疑問を持つ。阿修羅さんはなぜ手を合わせているんだろう―。

平和を考える物語。極秘だった仏像疎開は不明な部分が多く、著者は預かった家の子孫に取材しフィクションとしてまとめた。美術品と違い、生類を守る仏像は寺にあってこそ皆が拝める。疎開させなかった仏像もあったという。

奈良の仏像は戦乱や火災、廃仏毀釈(きしゃく)を乗り越えて1200年以上も受け継がれてきた。その歴史の一端が垣間見られる。(くもん出版・1540円)

産経新聞
2023年8月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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