笑い過ぎて腹が痛くなる!「ロト7」を毎週買い続けた人のエッセイ

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明日ロト7が私を救う

『明日ロト7が私を救う』

著者
宮田珠己 [著]
出版社
本の雑誌社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784860114800
発売日
2023/07/26
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

脱力系エッセイの究極形態? 「無理ゲー日本」を楽しく生きよう

[レビュアー] 篠原知存(ライター)

 著者は7つの数字を当てるロト7を毎週買い続けている。次に出そうな数字を考えたり、よく当たるという売り場を巡ったり、2等より3等の賞金が高かった第273回の不思議を考察したりする。

 もとは雑誌連載で、誌上では「私がロト7に当たるまで」というタイトルでスタート。高額賞金が当たるまで書き続けると決意表明した。それが単行本化にあたって『明日ロト7が私を救う』に改められた。どうやら当選はまだらしい。

 だからか、「はじめに」にはこんな言葉も。〈本書を買ってお守りにすればまたたく間に運気が開け、かつてないほどのお金が転がり込んでくる(私に)可能性があるので、ぜひ一家に一冊買って、神棚にお供えするといいでしょう〉。

 ウミウシ、ジェットコースター、迷路旅館、石拾い……数々の著作を楽しませてもらっているが、バカバカしいことほど(私は)面白く感じるので、ビバ、ロト7。

 数字の選び方も一応書いてあったりはする。〈奇数がいいみたいよ〉とか〈今、31と32が熱い〉とか、何言ってんすか。笑いすぎて腹が痛いです。

 金銭感覚やコロナ禍を描いた脱力系エッセイとして楽しく読ませてもらった。〈ああ、よかった明日何億も当たって。そう思い込むことによるプラシーボ効果でがんばれる〉。

 真面目に働けど現状維持さえ難しい「無理ゲー日本」で生きていくのに必要なのは、高額賞金なんかじゃない(当たればいいけど無理)。外れまくっても、ああだこうだぼやきつつ、飄々と自虐ネタを書き連ねる著者は、すごく楽しそう。

 世の中をこう眺めたら、面白おかしく生きられるよ、というお手本に思える。ぜひ一家に一冊。落ち込んだ時なんかにパラパラ読むだけで、きっと気分が晴れるから。ロト7なんて買わなくたって、明日宮田珠己が私を救う。

新潮社 週刊新潮
2023年8月31日秋初月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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