<書評>『絶対聖域 刑事 花房京子』香納諒一 著

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絶対聖域

『絶対聖域』

著者
香納諒一 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334915391
発売日
2023/07/20
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<書評>『絶対聖域 刑事 花房京子』香納諒一 著

◆盛り上がる「倒叙」の醍醐味

 『川崎警察 下流域』等、本年も次々と快作を放っている香納諒一の新作は、「刑事 花房京子」シリーズ第三弾『絶対聖域』である。

 このシリーズは大評判をとった「刑事コロンボ」のように、犯人の犯行を先に描き、それを後に探偵役が解いていく倒叙ミステリーの傑作群だ。

 今回の事件は刑務所に一般市民を招くオープンデイに起こったもの。この日は一般市民や模範囚が一緒に演歌歌手の天童小百合のコンサートを聴けるとあって和やかな雰囲気。

 が、この日元受刑者の首吊り死体が発見され会場は騒然となった。当日ここを訪れていたのが刑務所長の倉田と旧知の間柄のベテラン刑事・綿貫とその部下・花房京子だった。これから犯行を行う倉田は、綿貫との出会いに不吉なものを感じるが、細かい事にズケズケと踏み込んで来るのは京子の方で、ここでコロンボよろしく倒叙ものの醍醐味(だいごみ)が大いに盛り上がってくる。この作品、全体に張られた伏線の巧みさが絶妙である。

(光文社・1870円)

1963年生まれ。作家。91年「ハミングで二番まで」でデビュー。

◆もう一冊

『完全犯罪の死角』香納諒一著(光文社文庫)。「刑事花房京子」シリーズ第1弾。

中日新聞 東京新聞
2023年8月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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