『全国水害地名をゆく』
- 著者
- 谷川 彰英 [著]
- 出版社
- 集英社インターナショナル
- ジャンル
- 歴史・地理/地理
- ISBN
- 9784797681284
- 発売日
- 2023/08/07
- 価格
- 1,012円(税込)
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
<書評>『全国 水害地名をゆく』谷川彰英 著
[レビュアー] 澤宮優(ノンフィクション作家)
◆由来から分かる地形
近年の豪雨災害は目を覆うひどさがあり、災害を予知することが焦眉の急である。その中で注目されるのが、地名から見た地形の特色である。
2014年に広島市で大規模な土砂災害が発生したが、災害箇所は、かつて「蛇落地悪谷(じゃくらくじあしだに)」と呼ばれ、「蛇」の文字が使われていた。「蛇」は、蛇が崖を崩壊させる伝承のある場所で、地崩れを起こしやすい地形である。
20年に洪水を起こした熊本県の「球磨川」の「クマ」は、入り込んだ奥まった所、川が曲がった状態など危険な意味をさす。日本各地には「鶴」の付いた地名も多いが、これは「水流(つる)」に由来し、増水すれば洪水になる湿地帯である。愛知県に多い「湫(くて)」は低湿地帯を意味する。
地名は自然発生的に生まれたので、地域の伝承と古人の思いが込められる。そこから災害に対して事前に備えをすることの必要性を本書から教えられる。
難病に苦しみながら、渾身(こんしん)の思いで書き上げた地名研究者からの教えを、襟を正して学びたい。
(インターナショナル新書・1012円)
1945年生まれ。地名作家。「地名の由来を歩く」シリーズなど。
◆もう一冊
『地名は警告する 日本の災害と地名』谷川健一著(冨山房インターナショナル)