『江戸に向かう公家たち』
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『江戸に向かう公家たち』田中暁龍(としたつ)著
[レビュアー] 産経新聞社
江戸時代の公家は、勅使(天皇の意思を伝える使者)に同行したり、女性なら将軍に嫁いだり大奥に仕えたりといった事情で江戸へ下向した。公家の数は幕府によって倍増。公家は所領を与えられるなど経済面で幕府に依存する一方、京都の文化を江戸に伝えていた。装束を正してくれる人材も、武家社会で必要とされたという。
公家は幕府に蹴鞠など家芸の家元と認められ、各種免許の権限によって収入を得た。武家にとって、公家の江戸下向は弟子入りの機会。門人たちによって歌会のような文化サークルが形成されるなど、公家と武家の交流の様子が興味深い。(吉川弘文館・1980円)