自分の意見を「言語化する力」を身につけるヒントは数学にあった!

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思いつきって、どうしたら「自分の考え」になるの?

『思いつきって、どうしたら「自分の考え」になるの?』

著者
深沢 真太郎 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784534060433
発売日
2023/09/29
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

自分の意見を「言語化する力」を身につけるヒントは数学にあった!

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

自分の意見や考え方はきちんとあるのに、それを上手に言語化できない。あるいは、どう伝えたらいいのかわからないーー。相手に意見を伝えることに関し、そういった悩みを抱えている方は、決して少なくないはず。

しかし、『思いつきって、どうしたら「自分の考え」になるの? 直感を論理的な意見にする授業』(深沢 真太郎 著、日本実業出版社)の著者によれば、それは自分の主張がないからではないのだそうです。

単に、“なんとなく思っていること”や“直感的に感じたこと”を自分の意見として表現するスキルが足りないからにすぎないというのです。

ちなみにご存知の方も多いと思いますが、著者は数字に強く論理的な人を育成する「ビジネス数学」を提唱する教育者。企業の人材育成や、ビジネスパーソンのスキルアップに役立つコンテンツを開発している人物でもあります。

そうしたバックグラウンドをベースに「どうすれば人は根拠を自分で用意できるようになるか」という問いを自分に投げかけてみた結果、「『根拠をつくる』とは、数学とほぼ同じ行為である」という結論に至ったのだとか。

数学とは、ある主張をし、それを分析し、その主張が正しいと根拠を揃えて説明する学問です。あなたにも馴染みのある例を挙げるなら、「〇〇であることを証明せよ」といった類の問題がまさに数学です。ですから、数学において唯一の成功とは、根拠を揃えて誰もが納得する証明ができたときなのです。

つまり、私がビジネスパーソンに指導しているビジネス数学とは、日々の生活や仕事のさまざまな場面において役立つ、根拠のつくり方を身につけるためのものでもあります。(「はじめにーあなたは職場で『自分の意見』を言えていますか?ー」より)

そしてそれは、多くのビジネスパーソンが抱えている「自分の意見がいえない」という悩みの解決に直結するというのです。

こうした考え方を軸とした本書は、「職場で自分の意見がうまくいえない」と悩んでいる若いビジネスパーソンが、「根拠のつくり方」を身につけたことによって新たな景色を発見するというストーリー仕立てになっています。

基本的には流れに沿って、そのプロセスを追っていくべきだと思うので、ここでは随所に挟まれた「コラム」のなかから、本編に付随する著者の考えを抜粋してみることにしましょう。

数学と言語化スキル

本書には、数学者である登場人物の女性が「数学とは説明である」旨の発言をする場面が登場します。

数学が説明とは、少しばかり意外な主張だとも思われるかもしれませんが、このことに関連し、著者は以下のように述べています。

私たちが学生時代に数学を勉強する理由の1つは、言語化して誰でもわかるように説明するスキルを得るためです。

言語化とはあいまいでぼんやりした状態を明確な言葉で説明することを指します。(72ページより)

たとえば「“円”とはどんな形でしょうか?」と問われたとき、「まんまる」と答える方もいらっしゃるかもしれません。ところが「まんまる」とは、きわめてあいまいで、ぼんやりとした概念でもあります。そのため、感覚的にには間違っていなかったしても、人には伝わりにくいわけです。

だからこそ大切なのは、この「まんまる」を明確なことばで、誰でも共通のものを認識できるように表現すること。そして、それこそが数学の本質だというのです。(72ページより)

「前提」を確認できない現代人

発言や文章などのコミュニケーションでことばを使う際、そこには必ず“前提”や“発言者の立ち位置”があるもの。それらを理解しないまま、発言を聞いたり文章を読んだりしたら、本当の意味で相手の主張を理解することはできないとも解釈できるわけです。

例えば、SNSでの誰かの発言に対して「正しい・正しくない」を議論(?)したがる人がいます。ときにはそれがケンカやトラブルに発展することも……。

気軽に発信やコメントができるからかもしれませんが、個人的にはあまり有益な行為ではないと思っています。なぜなら、その発信をした本人なりの前提があり、それがわからない状況では「正しい・正しくない」を論じることなど本来はできるわけがないからです。(118ページより)

SNSを利用すること自体は悪いことではありませんが、もう少しだけ“前提”というものの存在に意識を向けてもいいのではないかという提案です。(118ページより)

体温のある数値

著者は仕事柄、多くのビジネスパーソンから「どうも数学が苦手なんです」という発言を聞いてきたそうです。そして、「どうすれば、こうした発言が減るか」を徹底的に探求してもきたのだといいます。

そしてその結果、ひとつの結論に行き着いたようです。それは、「学力や知識の問題ではなく、人間という生き物との相性の問題」だということ。そして、「数字とはコトバ」だともいうのです。

とはいえ数学には、どこか無機質で冷たい印象もあります。温もりがなくて、体温が感じられず、血が通っていないというような。だとすれば、血の通った生き物と相性がよいはずがありません。

ならば、この問題を解決する方法はたった1つしかありません。温もりがある。体温を感じる。血が通っている。数学とは、そう感じることができるコトバだと再定義すること。そして、実際に仕事で体温のある数値を使うことです。(216ページより)

これは数学が苦手な方にとって、安心できる考え方ではないでしょうか?(216ページより)

前述したように本編はストーリー仕立てになっているため、読者は主人公の気持ちになって大切なことを学べるはず。もし、意見をうまく伝えられないという悩みを抱えているなら、一度手にとってみるべきかもしれません。

Source: 日本実業出版社

メディアジーン lifehacker
2023年10月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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