『雑談が上手い人が話す前にやっていること』
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雑談上手になる近道は「感じのよい人」になることだった!で、どうしたらいい?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
いろいろな会社で研修講師を担当しているという『雑談が上手い人が話す前にやっていること』(ひきたよしあき 著、アスコム)の著者は、「雑談が苦痛」だと感じている人がとても多いと指摘しています。
ただし、ここでいう雑談とは、会社の上司が相手の雑談とか、たまたま会った知り合いと場つなぎのためにする雑談などのこと。家族や友人、仲のいい同僚とのそれとは違うわけで、いいかえれば、「気を使う相手と話をしなければならないこと」がつらいということになるのです。
もちろん仕事である以上、雑談の技術を磨いたり、「雑談は苦手」というメンタルを克服する必要はあるかもしれません。とはいえ、もっと大切なことがあると著者はいうのです。それは、「感じのよさ」。
「雑談力を上げなければ!」と気負ってしまったとしたら、それが実現できたという実感を得ることはなかなか難しいでしょう。でも、「感じよくする」だけなら、無理なくできそうな気もします。そこで本書では、そうなるためのコツを紹介しているわけです。
雑談は、仕事の潤滑油にもなり、時には思いもよらぬイノベーションを生むこともあります。
多くの企業が、「雑談が苦手な社員が多い」ことを問題視し、雑談の機会を増やそうとさまざまな施策を講じています。
でも、私が知る限り、あまり効果は出ていないようです。
まず最初に強調してお伝えしたいこと、それは「みんな雑談が苦手」ということです。
自分だけでなく、雑談する相手も苦手意識があることが多いのです。(「はじめに」より)
たしかにそのとおりかもしれませんし、そう考えれば気持ちもいくぶん楽になるのではないでしょうか? しかし、「感じのよさ」についてはもう少し掘り下げたい気もします。そこで第2章「雑談が上手い人が話す前にやっていること」に注目してみたいと思います。
雑談は「感じのよさ」が武器になる
著者は前述のとおり、苦手な雑談を克服するいちばん手っ取り早い方法は「感じよくする」ことだと主張しています。「感じがよい」は武器になるのだと。しかし、「感じのよい人」と聞いてどんな人をイメージするでしょうか?
・顔を合わせるたびに、会釈してくれるお隣のAさん
・話したことはないけれど、いつもパリッとしたシャツを着ている近所のBさん
・面倒なお願いをしても、「はーい!」と元気よく返事してくれる総務のCさん
・いつも、笑顔でニコニコしている芸人のDさん(76ページより)
たとえば、こんな人たちが思い浮かぶかもしれません。だとすれば知りたくなるのは、「感じのよい人」になるためにはなにをすればいいのかということ。著者によれば、スタートは「鏡の前に立つ」ことだそう。鏡の前の自分を見つめ、顔だけでなく、姿勢や服装もしっかりと見るべきだというのです。
・しかめっ面になっていませんか
・笑顔は出ていますか
・思ったより疲れた顔をしていませんか
・髪の毛がボサボサではないですか
・猫背になっていませんか
・服にシワはありませんか
・指を映してください。爪が伸びていませんか
・髭はきれいに剃れていますか
・まさか……鼻毛は出ていないでしょうね?
(77〜78ページより)
こうして考えてみると、チェックするべきことは意外に多いのがわかります。つまり、「感じのよい人」になる一丁目一番地は「見た目」だということ。
一般的には、「見た目」よりも「内面」が大切だといわれます。とはいえ、感じよく見られるように見た目の印象を整えた姿は、相手に信頼感を与えるものでもあります。したがって、話す内容や声の大きさ、話すスピードなどを気にする前に、まずは「見た目」を整えることが大事なのだというわけです。(76ページより)
なにより大切なのは「清潔感」
感じよくすると言っても、おしゃれじゃなきゃいけないということではありません。
求められるのは「清潔感」です。言い換えれば、相手に不快感を与えない身だしなみにするということ。(80ページより)
したがって、トレンドに敏感になる以前に、シャツにアイロンをかけ、髪の手入れを怠らないなどの配慮が大切だということ。いうまでもなく、清潔感があると人は「さまざまなことに気遣いができるのだろう」というように想像をふくらませ、多少なりとも好意的なイメージを抱くはず。
逆に、どれだけ話がおもしろかったとしても、髪がボサボサだったり、だらしない格好だったりしたら「生理的に無理」だと拒絶されてしまう可能性があるわけです。
フランスの詩人ボードレールは、
「ダンディは、鏡の前で生き、かつ眠らねばならぬ」
という強烈な言葉を残しました。気を抜かず、どんなときにもダンディであれ、という教えです。
なかなかここまでは徹底できませんが、自分の顔や姿を鏡に映して、客観的に、人からどう見られているかをチェックする習慣は身につけたいものです。(81ページより)
著者もプレゼンや大切な会議の前には、必ずトイレで鏡を見て、服装や髪型をチェックするのだそうです。そして緊張した面持ちならば、無理にでも口角を上げて笑顔をつくるのだとか。つまりは「人に見せる顔」がどんな状態かを自分で確認するわけです。
街を歩いていたって、ショーウィンドーに映った自分を見て、猫背になっていれば直す。
自分の姿を自分で見るだけで、「感じのよい人」に近づくことができるのです。(81ページより)
つまり、「感じのよい人」になるためには、日常的に身のまわり全般に気を遣うことが大切だということです。(80ページより)
じつは著者も、もともとは雑談が苦手だったのだそう。「心の持ち方とわずかなトレーニングで、『雑談力ゼロ』を克服できる」と断言しているのは、そんな理由があるから。だからこそ、このように大きな視野で雑談力をとらえた本書を活用しながら、“雑談の壁”を乗り越えていきたいものです。
Source: アスコム