『中世ヨーロッパの色彩世界』
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【気になる!】文庫『中世ヨーロッパの色彩世界』 徳井淑子著
[レビュアー] 産経新聞社
初夏の新緑は青春の色であり、恋の色-。こんな色のイメージを、中世欧州の物語や写本挿絵に描かれた衣服の色から読み解いた。
男性のスーツに黒や紺が多いのは16世紀以降の禁欲的なプロテスタントの影響で、中世末期の12~15世紀の服飾はカラフル。紋章に使うと目立つ赤色が好まれた。東洋で高貴とされる黄色は欧州で嫌われ、迫害対象のユダヤ人に黄色いしるしを強制。森は狩猟の獲物やドングリなどの恵みをもたらす一方、盗賊や狼が出没する異界であり、緑は魔物の色でもあったという。
平成18年刊『色で読む中世ヨーロッパ』を文庫化。(講談社学術文庫・1408円)