『吉村昭と津村節子』
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『吉村昭と津村節子』谷口桂子著
[レビュアー] 産経新聞社
ともに作家として大成した「おしどり夫婦」の知られざる軌跡を丹念に描いたノンフィクション。
片や徹底した取材に基づく重厚な歴史小説で人気を博し、片や自伝的小説での芥川賞受賞を皮切りにキャリアを重ね文化功労者に。だが、夫婦の道のりは平坦(へいたん)ではなかった。結婚当初に経験した行商生活、創作活動への焦りから頻発した夫婦げんか…。芥川賞受賞時に津村が抱いた吉村への贖罪(しょくざい)意識と献身が、吉村の太宰治賞受賞やベストセラー『戦艦武蔵』誕生の下地となるくだりは興味深い。頑固で負けず嫌いだが家族愛に満ちた2人の作品を、もう一度読み返したくなる。(新潮社・1815円)