【手帖】読むクスリ、処方します

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 心身の具合が優れないとき、具体的な症状や悩みに合わせた小説を紹介してくれる-。『文学効能事典 あなたの悩みに効く小説』エラ・バーサド、スーザン・エルダキン著/金原瑞人、石田文子訳(フィルムアート社・2000円+税)は、そんな個性的なブックガイドだ。

 例えば「インフルエンザにかかったとき」。薦められているのはミステリーの女王、アガサ・クリスティーの名作『アクロイド殺害事件』だ。筋を理解し、謎解きに使う知力が〈インフルエンザで弱った灰色の脳細胞を、過剰な負担をかけることなく奮い立たせるのにちょうどよい〉という。

 「広場恐怖症のとき」(“処方薬”として薦められているのは、ある著名な日本人作家の代表作!)とか、「ネクタイに卵がついていたとき」「恋した相手が尼僧でもあきらめられないとき」なんて、とても真面目に書いているとは思えない項目もたくさん出てくるから楽しい。200を超える小説の選択と添えられた解説に、納得したり、首をひねったり、大笑いしたり…。ページをめくっているうちに気づく。このブックガイドを読む体験そのものが一服の清涼剤となっていることに。

産経新聞
2017年9月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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